A-24
アリル系反応性乳化剤のアクリル酸エチルとのミセル共重合特性
蜂須賀 渉
【緒言】
アリルモノマーのラジカル重合に関しては古くから研究されているが、ビニルモノマーのよう に高分子量体が得られず、オリゴマー程度しか得られていない。この理由として、アリルラジカ ルの安定性や生長ラジカルのモノマーへの連鎖移動反応がある。このようなことはアリル基が典 型的な非共役モノマーであるために起こる。
反応性乳化剤であるSR-10 (Figure 1) は、これまで反応性乳化剤としての有効性が認められてき た疎水基がノニルフェニル基のものに代わって新しく開発されたもので、疎水基がアルキル基で、
重合官能基がアリル基となっているものである。また、界面活性モノマーがミセル共重合する段 階で共重合速度の増加、生長反応の促進、停止反応の抑制が起こると考えられる。そこで本研究 では、Figure 1 に示したアリル系反応性乳化剤 SR-10 のアクリル酸エチル EA とのミセル共重 合性および単独重合性について検討した。
【実験】
SR-10 とアクリル酸エチル (EA) との共重合 SR-10(cmc = 6.8 × 10-4 M ) (1 mmol, 0.824 g)、開始剤としてペルオキソ二硫酸カリウ ム(KPS; 0.1 mmol, 0.027 g) を イ オ ン 交 換 水 (5 mL) に溶かした。精製アクリル酸エチル (EA, 1 mmol, 0.100 g) をナスフラスコに入れ、
SR-10、 KPS の水溶液を添加した。その後、
窒素置換を3 回行い、温度 60°C で共重合を 行った。共重合後、凍結乾燥しシクロヘキサ ンを添加して振とうした後、デカンテーショ ンを行い共重合体を分離した(Table 1)。分 離法をFigure 2 に示した。また、共重合後、
を凍結乾燥したものを直接1H NMR 測定 し、SR-10 の転化率を求めた (Table 2)。
After Polymerization Freeze drying, 24 h
Vacuum
Supernatant Evaporation
Figure 2. Isolation after copolymerization of EA with SR-10 and homopolymerization of SR-10.
Unreacted monomer Cyclohexane
Decantation
Residue Run 1 Run 5
( )
47
O CH2CH2
CH2
CH2
CH2
CH2
Figure 1. Molecular structure of polymerizable surfactant (SR-10) used in this study.
CH
CH O O
O C11H23
( )10 SO3 NH4
72.2 Table 1.Copolymerization of SR-10 with EA in aqueous micellar solutiona)
Run SR-10
(mmol) EA
(mmol) Time
(h) Yield
(%) 24
1 1
a)Initiator,KPS,0.1 mmol; solvent,water,5 mL; temp.,60。 C.
1
SR-10 の単独重合
SR-10(1 mmol, 0.824 g)、ペルオキソ二硫酸カリウム (KPS; 0.05 mmol, 0.013 g) をイオン交換水 (5 mL) に溶かしナスフラスコに添加した。その後、窒素置換を 3 回行い、温度 60°C で 24 h 重合 を行った。単独重合後、シクロヘキサンを添加して分離した(Figure 2)。
【結果と考察】
SR-10 とアクリル酸エチル (EA) との共重合
SR-10 とアクリル酸エチル (EA) との共重合結果を Table 1 に示した。溶媒としてはミセルを 形成する水を用いた。72.2 % の収率でコポリマーが得られた。コポリマーの1H NMR スペク トルをFigure 3 に示した。1H NMR スペクトルに観察されるエチレンオキサイドのピークから SR-10 単位の反応が確認された。また、コポリマーの FT IR スペクトルを Figure 4 に示した。
EA 単位のカルボニル基のピークが観察された。これらの結果から Run 1 の生成物は SR-10 と EA の共重合体であることがわかった。Table 2 に共重合における SR-10 の転化率の時間変化を 示した。この結果から共重合が進むに従ってSR-10 の転化率が 24 時間で 70.0 % に達すること が分かった。EA の転化率は現在、検討中である。
SR-10 の単独重合
SR-10 の単独重合の結果を Table 3 に示した。シクロヘキサンに不溶のホモポリマーが 24.8
% の収率で得られた。
【まとめ】
ミセル水溶液系では、SR-10 と EA の共重合体が高収率で得られた。一方、SR-10 の単独重 合ではホモポリマーが得られが、低収率であった。
Table 3. Homopolymerization of SR-10
a)SR-10
(mmol) Time
(h) Yield (%)
a)Initiator,KPS,0.05 mmol; solvent, water,5 mL; temp.,60 。
C.
1 24 24.8
Run 5
5.33 1.982.00
214.28
14.26 8.91
δ(ppm)4 3 2 1 0
6 5 7 8
Figure 3.1H NMR spectrum of copolymer in DMSO.
DMSO
48
Table 2.Conversion of SR-10 for thecopolymerization of EA and SR-10a)
24 12 3
70.0 62.5 33.5 Run
2 3 4
a)Initiator,KPS,0.1 mmol; solvent,water,5 mL;
temp.,60。 C.
SR-10
(mmol) EA
(mmol) SR-10
Time (%) (h) 1
1 1
1 1 1
0 20 40 60 80 100
500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
Figure 4. FT IR spectrum of copolymer.
TRANSMITTANCE(%)
Wavenumbers (cm-1)