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日本艦艇名に込められた安泰祈願の類型分析

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27)박청국**

목 차

1. はじめに

2. 先行研究と命名源の特徴分析 3. 艦名に込められた安泰祈願の類型分析 4. おわりに

<국문초록>

舊日本海軍의 함정명에는 一貫되게 神에게 무사함을 기원하는 情緖가 담겨져 있다. 이 情緖는 함정명의 명명에 있어서 가장 중요한 要件이었던 것이다. 본 연 구에서는 이 함정 명칭에 담겨있는 무사함을 기원하는 類型을 분류하여 고찰해 보고 그 내면에 담겨져 있는 일본인들의 신앙관을 살펴보았다. 한 민족의 정서나 내적 신앙관은 짧은 시간에 바뀌기 어렵다는 사실에 입각하여 고찰하였다.

먼저 무사함을 기원하는 神을 중심으로 하여 유형을 분류해 보았는데, 여기에 는 신사나 절에서 모시는 신, 다음으로 민간 신앙의 자연신, 그리고 언어 속에 들 어 있는 神, 그리고 민속에서 전해져오는 악을 쫓는 靈, 그리고 역사적 사실에 연 유한 함정명 등의 유형 등을 살펴보았다. 신사나 절의 신에게 무사함을 기원하는 함점명은 산악명, 식물명, 하천명, 날씨나 기상명 등에 고루 분포되어 있었다. 이 는 일본인들의 신사, 절에서 모시는 신에 대한 신앙심의 발로로 볼 수 있다. 그 다음 자연신의 신앙에서 눈에 띄는 점은 「달의 신」과 「아지랑이」에 대한 신앙관이 었다, 세계에서 오직 일본에서만 볼 수 있는 함정명으로 「달, 비, 이슬, 서리, 밀 물, 썰물, 파도, 눈, 안개 등」을 들 수 있는데 이러한 명칭은 오직 「달의 신」과 연

* 本研究は2014年度 朝鮮大学校内研究費によるものである

** 朝鮮大学校

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결되어 있다는 신앙관에서 유래한 것이며 양적으로도 다른 함정명을 압도하고 있 다. 이러한 달의 신에 관한 신앙은 아직도 일본인들의 정서에 크게 영향을 미치고 있다고 볼 수 있다. 아울러 아지랑이를 능력 있는 자연신으로 모시는 독특한 일본 의 신앙관에 의해 아지랑이가 함정명으로 사용되었음을 볼 수 있었다. 이어서 언 어 속에 담긴 神에게 기원하는 言霊는 일본 독특한 전통에 입각한 신앙관인데 여 전히 일본인들의 마음에 깊이 뿌리내리고 있음을 볼 수 있다. 그 다음 악귀를 물 리치는 효능이 있다고 전해지는 풀이름이 함정명으로 사용된 유형을 살펴보았는 데, 일본인들의 재수 좋은 사물에 대한 강한 집착 내지는 신앙관을 엿 볼 수 있었 다. 이러한 신앙관에 따라 「밤, 감, 배, 쑥, 국화」 등의 명칭이 함정명으로 사용되 었다. 이 역시 다른 나라에서는 볼 수 없는 일본 특유의 함정명이라 할 수 있을 것이다. 덧붙여 일본인들은 역사적인 특정한 위인의 승리나 명예를 빌려 기원하는 정서는 매우 소극적이었으며 기피하는 경향이 있음을 알 수 있었다.

주제어 : 艦艇名, 信仰觀, 安泰祈願, 命名, 情緖

1. はじめに

本研究は旧日本海軍の艦名に込められた安泰祈願の類型を分析して みて、その奥底に潜んだ日本人の信仰観の一面をに究明してみよう とするものである。 旧日本海軍の艦名には一貫して安泰祈願の念が込 められていたということは先行研究で明らかになっている。 そして本 研究は、先ず先行研究を踏まえて艦名として採択された命名源の特徴 を調べてみてから、各艦名に込められた安泰祈願の類型を分類して みてそれに込められた信仰観を類推してみることにする。

艦名の命名、殊に戦時中の艦名の命名はその乗員の安泰を祈願する 最善の努力が尽くされていたと考えられる。 要するに武運長久を懇願

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する念が込められていたと考えられるのでる。 こうした判断の根拠は 旧日本海軍は運を重んじた前例があることから推測できる。 日露戦争 の際、東郷平八郎1) が連合艦隊司令長官に抜擢された背景には、東郷 の指揮力だけでなく諸将より運が良いという評判にも一因があった ということは、当時山本海軍大臣が明治天皇に報告した逸話からも窺 える。2) こうした情緒は海軍に限らず日本人の共通の情緒であるとも言 えるが、ともあれ陸軍より海軍の方が運の良さにこだわっていたと 考えられる。 これは海戦で相手の一撃に乗員の全滅または甚大な損失 に繋がることが茶飯事であったことと無関係ではなかったのであろ う。 実際、戦艦大和の場合、1945年4月九州沿岸の海戦で乗員2,498名が 一挙に戦死した。 小型艦であってもその被害は軽いとは言えない。 駆 逐艦の山雲、満潮、朝雲には其々230名が搭乗していたが、1944年10 月、同じ海戦で山雲227名、満潮226名、朝雲225名が死亡した。 こうし たことから乗員の武運長久且つ無事安泰を祈願する情緒が艦名に込め られたことは極めて自然的な行為であったかも知れない。 こうしたこ とから本稿では艦名に込められた安泰祈願の類型を分析して、日本人 の奥底の信仰観を考察してみようとするのである。 こうした研究は旧 日本海軍の艦名に「はかないものの代名詞」でもある「朝露」をはじ め、「陽炎(かげろう)、月、霧、雪、雲、雨、波、潮」などがあり、

遊覧船名でもないのに「栗、柿、梨、菊、よもぎ、蓮、朝顔、芙蓉」

などが軍艦名と使用された背景を明かす糸口になるだろうと判断す る。 尚、こうした艦名は日本以外の世界如何なる国でもその例が見ら れないと言われている。3) 本研究の対象はその命名源4)が山岳名、河川

1) 旧日本海軍大将。 日露戦争に艦隊司令長官に就任、東海(日本海)海戦でロシアのバル チック艦隊を撃破した。

2) (Wikipedia)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E9%83%B7%E 5%B9%B3

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名、植物名、天象気象名である巡洋艦、駆逐艦名を中心とする。 この 両者の艦名は昔から伝承された名称であって、艦名とは取り分け縁が ないと考えられるが、どうした仕組みで安泰祈願の情緒が込められ るようになったのかをも調査してみようとする。

2. 先行研究と命名源の特徴分析

先ず、艦名に関する先行研究から見てみる。 旧日本軍の兵器や艦艇 などを取り上げている書物は数え切れないほど、その量は夥しい。

しかし、その内容の殆んどが艦艇の場合、艦歴、性能諸元、兵装、戦 いなどが主な内容となっていて、艦名だけを取り上げている文献や 研究は、皆無であると言っても過言ではない。 参考文献を数年間求め てきたが未だ見つかっていない。 稀に艦名に関して述べられている本 もないことはないが、形式的な言及に止まっている。 例えば、駆逐艦 の艦名の「朝露」に関して、「朝置く露。 しばしばはかないもののたと えに用いられ、すぐ消え去るという印象が強い。 艦名としてはあまり ふさわしくないのではなかろうか」5)が艦名に関する叙述の全てであ る。 しかしこれぐらい述べられている書物も少ない。 そして筆者は(以 下、朴と称する)旧日本海軍の艦名だけを調査して見て、艦名から「運」

3) (Wikipedia)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%B9%E5%90%8D#.E8.BB.8D.E8.89. A6.

E3.81.AE.E5.91.BD.E5.90.8D

4) 旧日本海軍は艦艇が量的に増えることによって「海軍艦艇の命名基準」というものを 決めて各艦種ごとに命名の範囲を定めた。 これをもとに日露戦争の以降から第二次世 界大戦の終結まで艦艇が命名された。 戦艦は旧国名、一等巡洋艦は山の名、二等巡 洋艦は川の名、一等駆逐艦は天象気象の名、二等駆逐艦は植物の名、水雷艇は鳥 の名、潜水艦は番号で命名された。

5) 片桐大自, 뺷聯合艦隊軍艦銘銘伝뺸 光人社, 2003, p.295.

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を念頭においた痕跡が見つけられるのではないかと予測して研究を 始めた。 こうした考察の切っ掛けは、前項で述べたが「運」を大事にし たと考えられる旧日本海軍が、上で引用した艦名の「朝露」に関する「は かないもののたとえに用いられ、艦名としてはあまりふさわしくな い」のことが知らなかった筈がないのに、艦名と命名した裏にはさぞ かし何か訳があり、それがもしか「運」と繋がっているのではないの かと考えられたからである。 そして先ず朴は、山岳名に因んだ艦名か ら分析を始めた(朴2010)。 調査の結果、山岳名に因んだ艦名は山の高い 順ではないことが明らかになった。 要するに、艦名と採択されたのは 畝傍山(199m)、音羽山(242m)、衣笠山(201m)など比較的低い山岳名 が多く、日本アルプスの赤石山脈、飛騨山脈の北岳(3192m)、奥穂高 岳(3190m)、荒川岳(3068m)、赤石岳(3081m)などの峻峰名は艦名か ら除外されていたことが分かった。 艦名においての山の高い順は何の 意味もなかったのである。 尚、こうした現象こそ山岳名に因んだ艦名 に安泰祈願の情緒が込められた痕跡であったことが明らかになった。

それは低い山であっても、山の麓には例外なしに有名な神社仏閣が 立てられていたのである。6) 続いて植物名に因んだ艦名を分析した(朴 2011, 2014)。 植物名に因んだ艦名は主に駆逐艦名となっていたが、そ の数は74種ある。 これが戦時中に建造された一等駆逐艦名には亜流の 名が増える現象が見られた。 即ち、艦名の「若竹」「呉竹」「篠竹」「矢竹」

「竹」「雄竹」は全て「竹」の亜流になるが、この亜流を一種の植物と看做 す際、駆逐艦名に採用された植物名は40種以下となる。 日本に自生する 植物が六千種あると言われていると言われるから、艦名となった植 物名は極端に限られた数に過ぎなかったのである。 植物名といって手

6) 朴青国, 「旧日本軍の兵器名に込められた意識分析」, 뺷日本文化研究뺸 33輯, 東ASIA 日本学会, 2010, p.198.

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当たり次第に艦名と採択された訳ではなかった。 こうした現象も安泰 祈願を念頭においての形跡であったことが明らかになった。7)8) 続い て、朴は河川名に因んだ艦名を分析した(朴2012)。 河川名に因んだ艦名 も川の長い順にではなかった。 例えば、北海道の「石狩川(268km)」は 日本3番目、「手塩川(256km)」は4番目の川なのであるが艦名には採択 されなかった。 尚、四国の「四万十川(196km)」「吉野川(194km)」、中国 地方の「江の川(194km)」なども、その長さだけなら艦名となった筈な のだが採択されなった。 これに比して「竜田川(15km)」「五十鈴川(24km)」「酒 勾川(46km)」など比較的短い河川が艦名となっていることが分かった。

こうした現象も山岳名と同様、安泰を祈願する情緒からの選択であっ た。9) 艦名においても河川の長さは何の意味もなかったのである。

続いて、天象気象名に因んだ艦名を考察した(朴2016)。 天象気象名 は風系の艦名が多数を占めていた。 風の艦名には「太刀風」「羽風」のよ うに自然風ではないもの、「朝凪」「夕凪」のように吹く風でないこと も艦名と採択されていた。 有りと有らゆる風の名称が艦名と採用され ていたのである。 風に次いで月、波、潮、雲、霧、雨、露の順となって いて、電、雷、曙、朧、霓、弥生、夕暮、響、白妙、不知火、陽炎、

暁、朧、速鳥などは単独で艦名となっていた。 尚、天象気象名の艦名 の中に「日食、月食、月暈、竜巻、流れ星、極光(オーロラ)」等は見つ からなかったが、「はかないこと」の代名詞でもある「露」をはじめと して霧、霜などは艦名と採択されていた。 こうした現象も安泰祈願の

7) 朴青国, 「日本の兵器名に込められた呪術性考察」, 뺷日本文化研究뺸 39, 東ASIA日会, 2011, p.249.

8) 朴青国, 「植物名日本鑑定名に込められた情緒分析」, 뺷日本研究뺸 36, 中央大学校 日 本研究所, 2014, pp.48~57.

9) 朴青国, 「河川名の日本艦艇名研究」, 뺷日本文化研究뺸 43輯, 東ASIA日本, 2012, pp.216

~219.

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情緒からの採択であったことが明らかになった。10)

以上の艦名に採用された命名源の特徴は、その艦名に安泰祈願の情 緒が込められているという先行研究を踏まえて、次章では各艦名に 込めらた安泰祈願の類型を分類してみる。 異なる命名源を持って、ど うした仕組みが施されて同じ安泰祈願の類型が成立するのかを考察し てみる。

3. 艦名に込められた安泰祈願の類型分析

山岳名、植物名、そして河川名と天象気象名などの異なる命名源で あるが、艦名には一貫して神への安泰祈願の情緒が込められている ということは、前述の先行研究の通りである。 今章ではどうした神に 安泰を祈願するのか、その祈願の対象別に類型を分類してみようと する。 異なる命名源を持ってどうした仕組みで同じ神に安泰を祈願す ることができたのかを分析してみる。 本稿では安泰祈願の類型を五つ のパターンに分けて考察してみようとする。 その一番目は、祈願の対 象が神社仏閣の神であるタイプである。 これは日本人の普遍的信仰観 であるだろうが、異なる命名源をもって其々どうした特徴が生かさ れて、神社仏閣の神に安泰を祈願するのかを調査してみる。 二番目は、

その祈願の対象が民間信仰の神であるタイプである。 民衆に広く信奉 される自然神への祈願の類型に関して調べてみる。 三番目は言葉に宿 ると信じられた神、即ち「言霊」に安泰を祈願するタイプに関して見 てみる。 これは日本独特の信仰観であるとも言われるが、言の神に祈 願する類型の特徴を調べてみる。 四番目は日本民俗の伝承の魔除けの

10) 朴青国, 「天象․気象名の日本の艦艇名研究」, 뺷인문학연구뺸 제51집, 조선대학교 인문 학연구원, 2016, pp.363~367.

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霊に祈願する類型の特徴を調べてみる。 五番目はその数は少ないが、

縁起のよい日本歴史の事実を頼りに安泰を祈願する例を見てみる。

1) 神社仏閣の神に安泰を祈願する類型

「神社仏閣の神」に安泰を祈願する類型を考察してみる。 先ず山岳名に 因んだ艦名から見てみる。 艦名となった山岳には、前述しように、山 が低くても例外なしに有名な神社や仏閣が立てられている。 例えば、

「音羽山(242m)」は京都東山三十六峰の一つで、西側の山腹に「清水寺」

が位置している。 「畝傍山(199m)」は神武天皇がこの地で即位したとい う伝えにより明治21年に「橿原神宮」が創建され、周囲に延喜式内社畝 火山口神社がある。 「衣笠山(201m)」は京都市北西端にある小丘で、山 麓に「金閣寺」をはじめ「龍安寺」「等持院」など史跡、名刹が多い縁起の よい地として知られている。 「三笠山(283m)」は山頂に「春日大社」の本 宮神社が祀られている。 「笠置山(324m)」は山上に後醍醐天皇の行在所 が置かれた「笠置寺」がある。 その他、「愛宕山」は山頂に「愛宕神社」が あるが、愛宕神社は防火の守護神である雷神を祀ることで知られて いる。 「鞍馬山」は山中に「鞍馬寺」があり鞍馬天狗の住処として源義経が 武芸を鍛えた所と知られている。

このように低い山であっても神社仏閣が立てられている山岳はそ の高さに構わず優先的に艦名と採択された。 これはその神社仏閣の神 を意識して、その神に安泰を祈願しようした信仰観から採用された のである。 それで神仏の加護が望めない山岳は如何に高い山であって も、艦名からは除外されたのである。 山の高さは何の意味がなかっ。

次は「神社仏閣の神」を念頭に置いた河川名に因んだ艦名を見てみる。

これには先ず「五十鈴川」が挙げられる。 長さ24kmの短い川である五十 鈴川は「伊勢神宮」の内宮である「皇大神宮」の西側を流れる川で、昔か

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ら神聖な川として知られている。 伊勢神宮は神道においては最高神と 祭られ、古代には日本皇室の氏神として天皇家を中心に崇敬されたが 中世になってから日本全体の鎮守として日本各地の武士からも崇敬さ れた。 結局、「五十鈴」という名称は河川名にとどまらず神宮の名称に もなるので、神の加護が授かる縁起のよい艦名と受け止められたの である。 続いて、「竜田川」の場合、長さ15kmの短い河川であるが、そ の下流に「竜田神社」がある。 「竜田大社」とも呼ばれる竜田神社の祭神 は「天御柱命」という風をつかさどる神として古くから信仰を集めて きた。 こうしたことから艦名の「竜田」は河川名から因んだものの竜田 川を意味しているのではなく、「竜田の神」とも呼ばれる祭神を意味 していて、その神に安泰を祈願する縁起の良い名と受け入れられた のである。 次に「熊野」は熊野川に因んだものであるが、熊野川の流域 には「熊野本宮大社」と「熊野速玉大社」「熊野那智大社」がある。 この三大 社を熊野三山ともいう。 日本全国に約3千社ある「熊野神社」の総本社で もあり、熊野信仰の中心地でもある。 そして熊野という艦名は熊野神 社の神に安泰を祈願する情緒から採択されたのである。 因みに、「筑摩 川」に因んだ艦名の「筑摩」は、筑摩川の流域にある「筑摩神社」を念頭 においての艦名になる。 このように河川名に因んだ艦名もその河川と 縁を結んでいる神社仏閣の神に無事安泰を祈願しようとした意図から の採択であったので、河川の長さは問題にならなかった。

次は植物に因んだ艦名が「神社仏閣の神」と繋がりがある例に関して 見てみる。 神社やお寺と関連がある植物なら先ず神木が挙げられる。 植 物名の命名源から艦名となった神木は、松、榊、杉、楢、樫、樅、

楓、桂、椎、桧、欅、柳、桐、槙、榎、樟、栂、栃、榧などがある。

前述したように亜流名を一種とした際、艦名となった植物名は40種あ るので、ほぼ半分に当る。 亜流名は主に神木の樹木名が底を突いた際、

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使用された。 先ず「松」は日本では昔から不老長寿の縁起木であり、「榊」

は神々の対話を橋渡しする役割をする神聖な木とされていた。11) なお、

「杉」は神をまつる神聖な木とされていて「伏見稲荷大社」など日本各地 の神社で神木として祭られている。 「楢」の木には昔から神が宿ると信 じられているし、「樫」も各地の神社の神木と植えられている。 「樅」は 古来から神聖な木とされ信仰の対象になっていて古来から武将の崇敬 が厚かった「諏訪神社」の神木でもある。 「桂」は昔から神霊な樹木とさ れてきた。 水の神木とも知られていて京都の「賀茂神社」などで神木と 祭られている。 「椎」は「稲荷神社」の神木となっていることを始め、多 くの神社で神木として厚く崇敬されている。 「桧」は古来から神木とし て多くの神社で祀られている。 「欅」は京都の「稲荷神社」を始め多数の 神社の神木とされていて、齋槻とも呼ばれるがこれは神聖な槻、即 ち神聖な欅という意味である。12)「榎」は古くからお寺や神社の境内に 植えられて、神社の神域を護る神木として崇められてきた。 その他の 木も各神社で神木とされている。

以上、見てみた神木が艦名と採択されたのは、神木と縁を結んでい る神社の神に安泰を祈願しようとした信仰から由来したということ は言うまでもない。 因みに、艦名となった植物名には上の樹木だけで なく草類もあるが、神社仏閣と深い縁を結んでいる草花が艦名と なった例になる。 先ず、菊は日本では昔から不老長寿の花と言われる が、「浅草寺」では菊の節供の日に参拝客が菊の花を捧げた後、代わり に既に供えられている菊の花を一束、持ち帰る習わしがある。 持ち帰っ た菊を枕の下に敷いて寝れば無病息災で長生きできると信じた。 こう したことから花名である菊が軍艦名と採択されたのである。 次に、刈

11) 井上宏生, 뺷神さまと神社뺸, 祥伝社, 2009, p.19.

12) 川瀬敏朗, 뺷神の木뺸 新潮社, 2010, pp.128~129.

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萱(かるかや)は昔、屋根を葺(ふ)く刈り取った萱を表わす。 萱は茅とも 表記するが、屋根をふくのに用いられた人間に有益な草であったの で草の霊として、草の神の名となった。 刈萱は北海道にある樽前山(た るめざん)神社と、愛知県にある萱津神社で祭られている。 続けて、葵 は大きい花を咲かせる草であるが、賀茂信仰の総本山である京都の「上 賀茂神社」の神紋であって同社で祀られている。 このように神社仏閣と の縁から草花も、安泰祈願の信仰観から艦名と採用されたのである。

次は、天象気象名に因んだ艦名と「神社仏閣の神」との関連性に関し て見てみる。 前章で少し触れたが風に因んだ艦名は天象気象名中、絶 対多数を占めている。 これは日本人の風に対する信仰観が艦名にその まま反映されたものと見える。 これは歴史を通じて刻まれた文永と弘 安の役の神風に関する名残であったかも知れない。 ともあれ日本人は 古代から風を神と崇め恐れていて13)、多様な風神を祭ってきたが日 本の古代神話に登場する「級長津彦命」が風神であった。 この級長津彦命 は伊弉諾と伊弉冉の間に生まれた神であるが「伊勢神宮」の神としても 祀られている。 こうした風神を祀っている神社は日本各地に分布して いる。 その中で奈良の「竜田神社」が風神の信仰として有名であるが、

この竜田神社の風神の「天御柱命」は級長津彦命とも信じられていると いう。14) 他に、風神を祀っている神社は岐阜にある「風神神社」や「波夜 志命神社」「島穴神社」「風速神社」などがよく知られている。15) こうした 日本人の古代から受け継がれた風神への安泰祈願の信仰が、風名に因 んだ艦名と表出されたとも言えるだろう。

因みに天象気象名の「雷電」に因んだ艦名に関しても調べてみる。 日

13) 清田圭一著, 「自然の神々」, 八坂書房, 2000, p.284.

14) 井上宏生, 「神さまと神社」, 祥伝社, 2006, pp.241~242.

15) 菱沼 勇, 「日本の自然神」, 有峰書店新書, pp.61~62.

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本の民間信仰や神道では昔から雷を「雷神」と呼んで祭ってきたが、

特に落雷が多発する北関東の群馬の「雷電神社」を中心に雷神を祀る

「雷電信仰」が広まっている。 雷はその霊威から恵みの神とも、荒々し い霊神とも受け止められている。16)こうしたことから電と雷に因んだ 艦名は、雷神に安泰を祈願する情緒から艦名と採択されたのである。

以上、見てみたように神社仏閣の神に安泰を祈願する信仰観から採 択された艦名は山岳名、河川名、植物名、天象気象名など、あまねく 分布していて、量的に他の艦名を圧倒している。 日本人の神社仏閣の 神に対する厚い信仰観が窺える。 神社仏閣の神に対する日本人の強い 信仰の発露であるとも言えるであろう。

2) 民間信仰の自然神に安泰を祈願の類型

艦名の安泰祈願の対象が日本の民間信仰の自然神である例に関して 見てみる。 自然神は神社仏閣の神より範囲が広いという特徴がある。 先 ず、天象気象名に因んだ艦名中、民間信仰の「月神」への安泰祈願から 調べてみる。 古代から日本には月信仰が受け継がれてきた。 月は不死 を得た存在であると信じ、永遠に生きると思った。 その月を司る「月神」

は不死の存在として崇められたがその原理は単純且つ素朴である。 人 は月の満ち欠けの現象から月が欠けるのは月が死んでいくことであ り、満ちてくるのは月の復活だと信じて月は不死の存在であると 思ったのである。17) この月信仰は神道を媒体として定着したが、天照

16) 福田アジオ外, 뺷日本民俗大辞典뺸 吉川弘文館, 2007, p.791.

17) 月神の月読命は若返りの水を持っている神とも信仰された。 この若返りの水とは飲 むと若返ると信じられた水「変若水(おちみず)」「月の若水」ともいう。 これは月の不死 信仰から由来して霊薬とされた。 そして古代日本人は、人が死ぬのは月読命の変若水 が得られない為であると考えていた。 こうした伝承は最近まで沖縄の宮古島などで受 け継がれていた。

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大御神の弟神の「月読命」が月神と思われた。 こうしたことから月に因 む艦名は、月神に安泰を祈願できる極めて縁起の良い名称と受け止め られたのである。 なお、露、霜に因んだ艦名も、月神と繋がっている と信じられ縁起の良い艦名と見做された。 要するに古代人は月面が青 白く見えることから、水の色を連想して月神は水を持っていると 思った。 尚、月夜の時などに草原や田畠などに露が降りて濡れること も月神の業と信じた。18) こうしたことから世界の如何なる国でもその 例が見られない露、霜に因んだ艦名が日本では採択されたのである。

尚、潮に因んだ艦名も多いが、月は潮と不可分の関係を結んでいると 信じられたことから由来する。 日本書紀に月神である「月読尊」19)が伊 弉諾から「汝は青海原の潮流を治めなさい」と海を治めることを命じ られたという記述があることから、月読尊は海の潮を司っていたと も信じられた。20) こうした月神との繋がりによって潮の艦名も月神に 安泰を祈願できる縁起の良い艦名と受け止められたのである。 因みに、

「雨」「雪」に因んだ艦名に関して見てみる。 日本では雨の神は存在せず、

山の神や川の神が降雨や止雨の働きをしていた。21) こうしたことから 雨の艦名はやはり「月神」との繋がりによるものである。 前述した月が 水を連想させることから古代人は降雨も月神がもたらすものと信じ た。 尚、寒い地域の人は月神が雨でなく雪をもたらすと考えた。 次は、

天象気象名に因んだ艦名中、「陽炎(かげろう)」に因んだ艦名を見てみ る。 「糸遊」とも言われる陽炎は日本では昔から神格化されて摩利支天と 称された自然神である。 摩利支天はヒンズー教の「風神」の一種である が「Marici」の音訳で、光線や陽炎を意味する。 日本では摩利支天が中世

18) 福田アジオ(外)編, 前掲書, p.126.

19) 月読尊はイザナギノミコトの子で天照大神の弟であり、月神である。

20) 松前 健, 「月と水」, 前掲書 pp.44~147.

21) 菱沼 勇著 前掲書, p.64.

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以降、武士から熱く信仰されたが、それは陽炎が自由自在の神通力を 有していると考えられたからである。 要するに、陽炎は実体がないこ とから捉えられない、焼けない、また傷付くことがないと思われ武 士たちに人気のある神であったのである。 こうしたことから陽炎に因 んだ艦名は極めて縁起の良いものと受け止められた。

続いて山岳名に因んだ艦名の中に民間信仰との関連を見てみる。 こ れには日本の山岳信仰が挙げられる。 先ず、「比叡山」は古くから神が 宿る山として山岳信仰の対象となった。 なお比叡山が平安京の北東の鬼 門にあたるため王城鎮護の霊山として信仰を集めた。 こうしたことか ら比叡山に因んだ「比叡」という艦名は神から安泰が授かる縁起のよい 艦名と見做されたのである。 「妙高山」は越後富士とも呼ばれたが中世か ら修験者の行場として栄え、信仰登山が行われた。 山そのものがかつ ては「関山神社」の社領でもあった。 「鳥海山」は出羽富士とも言われれ る山で、古くから山岳信仰の対象となり中世は修験道場として発展し た。 「伊吹山」は日本武尊の伝説によると古来から霊峰22)として信仰さ れ、奈良時代には役行者の開山による山岳仏教の聖地となった。 このよ うに山岳名に因んだ艦名は「山岳信仰」と関連したものが少なくない。

次は河川名に因んだ艦名の民間信仰との関連に関して調べてみる。

先ず、「天竜川」に因んだ「天竜」から見てみる。 日本第九位の長い川であ る天竜川が艦名と採択された所以は、竜が昔から水を司る水神として 祭られた民間信仰による。 日本人は古代から海や川の水底には竜宮があ り、そこに住んでいる「竜神」は水界を支配する神と信じた。 また竜神 は仏法を守護し雨や水力を司る神力を持つ龍と信じられた。 こうした ことから龍が飛び回ることを意味する「天竜」は安泰祈願に相応しい 艦名と見做されたと考えられる。 続いて富士山を源流として流れる「酒

22) 神仏を祀ってある神聖な山の意である。

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勾川」に因んだ「酒勾」に関して見てみる。 日本人にとって富士山は単純 に高い山というイメージに止まらず、神霊が生きている神聖な山岳 信仰の対象として認識されている。 この神聖な富士山の麓を源流とし て流れる酒勾川は格別な意味のある川と受け止められ、酒勾川に因む

「酒勾」は富士山の霊妙な力に安泰を祈願できる縁起のよい艦名と受け 止められてから艦名と採用された。

以上、民間信仰の自然神に対する安泰祈願の情緒からの艦名を見て みた。 自然神の中で目立つのは「月神」に対する信仰であると考えられ る。 一見艦名に似合わしくなさそうにみえる露、霜、潮、波、雨、雪、

霧名も月神との繋がりがあると信じた日本的信仰観から艦名とされた ことを見てみた。 尚、山岳信仰の例も見てみたが、こうしたことから 世界の如何なる国にもその例のない天象気象名に因んだ艦名が日本で は実用されたのである。 日本での月信仰や山岳信仰などの自然神に対 する信仰観は長い伝統があり今も歴然と日本人の心底に働いていると 考えられる。

3) 言葉の神に安泰を祈願する類型

言霊とは言葉に宿っていると信じられた不思議な霊的な力且つ言葉 に宿っている神のことをいう。23)古代から日本人は「言霊の幸ふ国」24) といって日本は言霊の力によって幸せがもたらされる国であるとい

23)佐藤憲正, 뺷日本国語大辞典第二版第五巻뺸, 吉川弘文, 2001 p.925.

(古代 日本人は「かみこと(神言)」の霊力を信ずるだけでなく、人間のことば も善いことばは吉事を招き不吉なことばは凶事をもたらす力があり「こと(言) は「こと(事)」であると考えた。 そして、言霊の信仰では人が発した言葉は現 に影響を与えその良し悪しによって吉事や凶事が起こると信じるのである) 24) 万葉集に記されている文。 言霊の霊妙な働きによって幸福をもたらす国の意で日本

のことを指す。

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う表現に慣れていた。 言葉に神が宿ると信じた言霊の思想を違和感な しに受け入れていたのである。 艦名の命名においても意味の良い名が 良い運命をもたらすという情緒、即ち、言葉の神に安泰を祈願しよ うとした類型を見てみる。

先ず、蔦(つた)に因んだ艦名から見てみる。 蔦は塀や壁などをツタ わってはびこる植物であるが、「ツタわってはびこる」が「伝わって はびこる」と同じ発音であることから、昔から「子孫の繁栄の意味」と 受け止められて縁起植物とされた。25) こうしたことから蔦は縁起の良 い艦名と受け止められたのである。 次に、艦名の「葦(あし)」は、「あし」

が「悪し」に通じるのを忌んで「良し」と言い替えたのが定着して艦名 と採択された。 尚、果物の「梨」が艦名となったのは「なし」が「無し」に 通じることから「無し」という意味を積極的に用いて、盗難にあわぬ 家を立てるため鬼門の方角に梨の木を植えて「鬼門無し」にすること から、梨には魔除けの意味があるとして縁起植物と見做されたこと から艦名と採択された。 続いて「栗」が縁起の良いものと見做されたの は「搗栗(かちぐり)」に因る。 搗栗は栗の実を殻のまま干して臼でつき、

殻を取り除いたモのをいうが、「搗」が「勝」とに通ずることから「勝栗」

ともいい、縁起の良い食と見做され勝利の祝い、正月の祝儀などに 用いた。 こうした言霊の効果から「栗」が縁起のよいものとされ、艦名 と採択されたのである。

「柿」はもと神の宿る木として神聖視されたが、その名称から縁起 物となった面もある。 これは柿の発音が「掻き」と同じであることから

「お金を掻き集める」との商売繁盛の縁起木とされたが、お金を掻き 集めることは、直ちに「幸運に恵まれること」を意味することから縁 起の良い名として受け止められたのである。 因みに、草花の「夕顔」に

25) 丹羽基二, 뺷家紋と家系事典뺸, 講談社, 2009, p.88.

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因んだ艦名を見てみる。 夕顔が縁起植物とされたのは夕顔の実の名称 から由来する。 夕顔の実は「ふくべ(瓢)」というが、これを細く干した のが干瓢である。 「ふくべ」は福を招く縁起のよい食材とされた風習が あって26)、瓢のもとになる「夕顔」が縁起植物とされたのである。 そし て艦艇においての福を招くということは、勝利や無事安泰を意味す ることになるので「夕顔」は極めて縁起の良い艦名と見做されたので ある。

次は天象気象の「雪」に因んだ艦名を見てみる。 日本には雪の神はな く、前述したように月が水を連想させることから降雪も「月神」がも たらすものと信じていたが、寒い地域では月神が雨でなく雪をもた らすと信じた。 そして「雪」の艦名としての背景にはやはり月神の影響 によるものがあったのだが、「ゆき」という音が「幸」に通じることか ら、「雪」は幸運をもたらすという言霊から27) 艦名として採用された こともある。

次は、河川名に因んだ艦名中、言霊からの例に関して見てみる。 先 ず、「神通川」に因んだ艦名の「神通」が挙げられるが、神通はその名 前が神通力に通じている。 神通力とは「何事でもなし得る霊妙な力」と いう意味であるから、艦艇が神通力を持つということは神出鬼没の 機敏な艦艇になるという意味なので、艦名としては極めて望ましい 名と受け止められたのであろう。 次は、日本三大急流の一つである「最 上川」に因んだ艦名の「最上」を見てみる。 最上の漢字は読みは異なるが

「最上(さいじょう)」と同じである。 この最上が「いちばん上、いちばん 優れていること」の意味であることから「最強、最高の艦艇」になれと いう情緒から艦名と採用されたのであると考えられる。 続けて「川内

26) 瓢箪は古来、悪気を吸い込むといって縁起植物とされた。

27) 蔵 敏則(編), 「週刊日本の歳時記34」 小学館, p.5.

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川」に因んだ艦名の「川内」は、川内の発音が「センダイ」であることか ら「千代」の音に通じている。 要するに「川内」は「千代(ちよ)」に通じる し、また「千代」が「千代に八千代」にも通じることから長生きを祈願 する艦名としては極めて縁起の良い名と見做され、採用されたと考 えられる。 因みに「長良川」に因む艦名の「長良」を見てみる。 「長良」は 神社仏閣や民間信仰との縁は見られない。 しかし「長良」は「長らえる」

を連想させる。 「長らえる」には「長く生きてこの世に居る」という意味 があり、その文語形の「長らふ」の語幹は「長ら」であることから、長 良も「生きて長くこの世に居る」の意と読まれる。 そして安泰祈願の艦 名としては非常に望ましい艦名と受け止められたのであろう。

以上、見てみたように艦名の命名においての縁起のよい名とは、

ただ呼びやすいとか語感のよいものに止まらず、言葉に宿る霊威、

即ち言葉の神に無事安泰を祈願しようとした情緒からのものであっ た。 こうしたことは広く信仰されている神社の神木であっても、その 名称が言霊の側面から望ましくないと判断した際は、艦名から排除さ れる例から確認できる。 例えば、昔から武事の守護神を祭っている「諏 訪神社」は武将の崇敬が厚かった神社である。 この諏訪神社の神木であ る「梶(かじ)」は艦名として相応しい筈であったが、艦名からは除外さ れた。 それは「梶」の読みが「火事」に通じることから、不吉なことを連 想させることから排除されたと考えられる。 これと類似の例に「柞(い すのき)」がある。 日本各地の神社によく植えられている「柞」は日本に 自生する木の中で最も重くて硬い木であると知られている。28)柞の音 は「イスノキ」なので「椅子の木」に通じる。 「椅子の木」はすぐ「腰かけ るための木」「腰かける」が連想される。 合戦に出て活発に動き回るべき 艦名としては望ましくなかったのだろう。 こうしたことから「柞」は艦

28) 川瀬敏朗, 前掲書, p.88.

(19)

名から除外されたのである。

以上、見てみた言霊は言葉の神に祈願する日本独特の長い伝統を持 つ信仰観であるが、日本人の脳裏に根強く生き残って働いていること が分かる。 言霊に安泰を祈願する艦名は比較的草名や河川名に多かった。

4) 民俗の魔除けの霊に安泰を祈願する類型

日本民俗から魔除けの効験があると伝来された植物名に安泰を祈願 しようとした類型に関して見てみる。 こうした例は日本で縁起植物と 伝えられた民話に基づいたもので、ある客観的根拠を有しているも のではない。 こうした植物には、蓬、梓、朝顔、菊、葵、桃、柳、桐、

蓮、桑、茜、梅、椿、橘、早苗、薄、萩、葛などがある。 こうした植 物は草類が多く、稀であるが低い樹木もある。 尚、こういう植物は草 そのものが信仰の対象となっていたのではなく、前述したように日 本の民俗から邪気を払う魔除けの呪術的効能があるという伝承に基づ いたものである。

先ず、「蓬」は昔から、鬼が蓬に触れると体が腐るから近寄らないと 信じられ、魔除けや厄払いに使われた。 また蓬で虎の形をつくり門戸 にかけて邪気を払った風習もあったが、こうした民俗によって「蓬」

は縁起の良い艦名と見做された。 次に「茜」はその根から茜色という赤 色の染料を採った。 昔から赤には邪気を払う魔除けの力があると信じ られた。 そして赤の根元とも言える茜には呪術的力があると信じられ 縁起植物と見做されてきたことから縁起の良い艦名となった。 尚、「桑」

は昔から蚕がその葉っぱを食べ、長い絹糸がとれることから、延命 長寿且つ縁起の良い無病息災の木とされた。 尚、桑の霊力を信じ日本で は男の子が生まれた時に将来の厄を払って立身出生を祝う桑弓という 神事を行った。29)こうしたことから桑は霊力が宿っている縁起木とさ

(20)

れて、艦名として採用されたのである。 次に「椿」の場合、古代宮殿儀 礼として正月の初めの卯(う)の日に5尺ほどの木の棒で地面をたたい て悪霊を払う行事が行われたが、卯杖(うづえ)と呼ばれたこの棒は主 に椿が用いられた。30)このように昔から椿には霊力があると信じられ、

縁起植物と見做されたことから艦名に採択されたのである。 続いて「梓」

は巫女が神霊を呼び寄せるのに用いたり、神事や出産などの際、魔 除けに使用したりする梓弓を作るのに使用した霊妙な力がある木と 信じられた。 こうしたことから「梓」も艦名に採択されたのである。

以上、見てみた民俗の魔除けの霊に安泰を祈願する類型は、邪気を 払う魔除けの呪術的効能のある草木と語られてきたことが多かった。

古代の人は病気は邪気が体に浸透してから発病すると信じたのであ るから、邪気を追い払うことによって病気も治ると信じた民間療法 からの草類である考えられる。 こうした草類が艦名と採択されたのは、

その霊力をもって艦艇の魔を除けて安泰をもたらしたいという信仰 観からのことなのである。 日本人の縁起物に関する根強い信仰観の働 きによるものであると考えられる。

5) 日本の歴史的縁起に安泰を祈願する類型

日本の歴史的な事実に因む艦名の例を見てみる。 先ず、「不知火」が あるが、この不知火は九州の八代海に陰暦7月末頃の夜に見える無数 の火影をいう。 沖に浮かぶいか漁船の漁火が水面に屈折によってさま ざまな形に変化して見える現象であるが、昔、景行天皇が九州南部の 熊襲を征伐するために熊本を訪れた際、この不知火を目印に船を無事に 岸につけたと伝えられている。31) この不知火は神仏との繋がりは見ら

29) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A1%91/ウィキペディア「クワ」

30) 大島建彦外, 뺷日本を知る事典뺸 社会思想社, 2007, p.858.

(21)

れないが、天皇の船を無事に導く役割をしたという故事から縁起の 良い内容と受け止められ艦名と採択された。

続いて、「大井川」に因む艦名が挙げられる。 大井川を巡って「大井川 の神霊」を祀るという「大井神社」も幾つか存在するが、その数は少な い。 大井川が日本全国にその名が知られたのは歴史的事実からである。

静岡県中部を流れる大井川は江戸時代に江戸防衛と徳川家康の隠居城 であった駿府城の外堀の役目を果たすため、この大井川には架橋は 勿論、船による渡し舟も厳禁とされた。 そのため大井川は東海道屈指の 難所とされ大井川を渡る苦労を表した「箱根八里は馬でも越すが、越 すに越されぬ大井川」という言葉が広まったのである。 こうした難所と 言われた大井川は、接近さえ許されなというそのイメージが生かさ れ、艦名と採択された要因となったと考えられる。

見てみたように日本の歴史的縁起に安泰を祈願する類型の艦名は少 ない。 過去の威厳を受け継いでほしいという情緒からの艦名であった と考えられるが、日本人の情緒は歴史的人物の勝利や名誉に託して祈 願することは極めて消極的で遠慮したことが分かる。

以上、考察してみたように安泰祈願の情緒は艦名の命名の際、最も 重要且つ基本的要件と働いた。 艦艇別に異なる命名源であったが、一 貫して神への安泰を祈願したいという情緒から、神社仏閣の神と、

自然神、そして言の神と、魔除けの霊に安泰を祈願する類型に分類す ることができた。 安泰祈願という窮極的価値を実現する過程で、山と 川の命名源の場合、その高さと長さは意味のないものと見做された り、植物名は四十種前後だけが艦名と採択された現象が見られた。

尚、天象気象名中に「風神」や「月神」などの自然神との関連が認られな いと判断した「日食、月食、竜巻、流れ星、極光(オーロラ)」などは艦

31) 片桐大自, 前掲書, 2003, p.406.

(22)

名から排除されていた。

4. おわりに

旧日本海軍の艦名に込まれた安泰祈願の類型を分析してみてから日 本人の信仰観を考察してみた。 艦艇別に命名源は異なっていても一貫 して神への安泰祈願の情緒からの命名であったという先行研究をを 踏まえて、安泰祈願の対象になる神を中心にその祈願の類型を分類し てみた。 類型は神社仏閣の神、民間信仰の自然神、言葉の神、民俗の魔 除けの霊、歴史的縁起に分類して考察してみた。 神社仏閣の神に対す る祈願は山岳名、河川名、植物名、天象気象名にあまねく分布してい て、量的にも他の艦名より多かった。 神社仏閣の神に対する日本人の 強い信仰観の発露であるとも考えられる。 続いて自然神の中で目立つ のは、月神に対する信仰であった。 月神との繋がりがあると信じられ た信仰観から、世界の如何なる国からもその類似の例が見られない 月、露、霜、潮、波、雨、雪、霧名などが艦名と使用されたのであ る。 尚、陽炎が自然神として信仰されていることが明らかになった。

こうした長い伝統のある自然神に対する信仰観は、日本人の奥底に歴 然と生きていると考えられる。 次に、言霊は言葉の神に祈願する日本 独特の信仰観であるが、日本人の脳裏に今も根強く生き残って働いて いることが明らかになった。 次に、邪気を払う魔除けの呪術的効能の ある草花名が艦名と採択されたのは、その霊力をもって艦艇の魔を 除けて安泰をもたらしたいという信仰観からのことであった。 これ を通じて日本人の縁起物にこだわる根強い情緒が窺えた。 尚、こうし た言霊と民俗の魔除けの霊に祈願する信仰観が「栗、柿、梨、菊、よ もぎ、蓮、朝顔、芙蓉」などの艦名の選択の背景であったことが明ら

(23)

かになった。 因みに、日本の歴史的人物の勝利や名誉に託して祈願し ようとすることは極めて消極的であったことが明らかになった。

参考文献

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(25)

Abstract

Type analysis of the secure prayer put for a Japanese war vessel name

32)Park, Chung-kuk*

The name of a warship of the old Japanese Navy is christening out of emotion of the secure prayer to God throughout. The emotion of the secure prayer was the most important and in the case of the adoption of the name of a warship, it acted with basic requirements. Preferential God of the Shinto shrine Buddhist temple as an object of the secure prayer.

It was put the ingenuity according to a naming source to assume it a name of a warship of the secure prayer. Because the prayer of peace and security was put in a name of a warship, as for the mountains and the river name, the height and length were ignored in the adoption of the name of a warship. They thought that God of the month protected the name of this war vessel. The Japanese thought the war vessel of the name of the month to be the good name. IA name of a warship and an adopted phenomenon only around 40 kinds of plants name from the plant name which there were 6,000 kinds.

Key Words : war vessel name, a view of faith, secure prayer, naming, emotion

<필자소개>

이름 : 박청국

소속 : 조선대학교 일본어과 전자우편 : greenpk@chosun.ac.kr

논문투고일 : 2016년 12월 31일 심사완료일 : 2017년 2월 10일 게재확정일 : 2017년 2월 13일

* Chosun University

참조

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