JRI news release
2006 年度関西経済の見通し
2005 年 12 月 13 日
株式会社 日本総合研究所 調査部 関西経済研究センター
http://www.jri.co.jp/
※尚、本件は関西金融記者倶楽部、大阪経済記者クラブにて登録しております。
(会社概要)
名 称 : 株式会社 日本総合研究所(http//www.jri.co.jp)
創 立 : 1969年2月20日 資本金 : 100億円
従業員 : 2,926名(平成17年3月末現在)
社 長 : 奥山 俊一 理事長 : 門脇 英晴
東京本社:〒102-0082 東京都千代田区一番町16番 TEL 03-3288-4700(代)
大阪本社:〒550-0013 大阪市西区新町1丁目5番8号 TEL 06-6534-5111(代)
本件に関するご照会等は調査部 関西経済研究センター(吉本・西浦) (℡06-6534-5204)宛お願い致します。
(Email: yoshimoto.kiyoshi@jri.co.jp, nishiura.mizuho@jri.co.jp)
株式会社 日本総合研究所は、三井住友フィナンシャルグループのグループIT会社であり、
情報システム・コンサルティング・シンクタンクの3機能により顧客価値創造を目指す「知識エ ンジニアリング企業」です。システムの企画・構築、アウトソーシングサービスの提供に加え、
内外経済の調査分析・政策提言等の発信、経営戦略・行政改革等のコンサルティング活動、新た な事業の創出を行うインキュベーション活動など、多岐にわたる企業活動を展開しております。
要 旨
1. 関西経済は、2004 年半ば頃から「上向きの力」と「下向きの力」がせめぎ合う「踊り場的状況」
となっていたが、最近では「踊り場的状況」脱却の道筋が開けてきた。
2. 関西の輸出は、米国向けが堅調に推移し、中国向けも持ち直してきたほか、産油国の中東やロシ ア向けも高い伸びとなっている。このため、実質ベースで見た関西の輸出は、2005 年 7~9 月に ほぼ下げ止まった。
3. 関西の生産関連指標は、在庫が積み上がり気味になりながらも、景気後退期特有の本格的な在庫 積み上がりと生産調整に陥る手前で踏みとどまる微妙な動きが続いていたが、最近では電子部 品・デバイスの在庫調整進展や出荷の回復など明るい動きが出てきている。
4. 関西の設備投資は、景気が「踊り場的状況」となった局面においては、投資計画が実現せずに終 わる動きも生じたが、先行きの「踊り場的状況」脱却が展望されてくるにつれて投資計画上積み の動きが強まっている。
5. 関西では、景気拡大の波及によって、雇用者数や1人あたり賃金が前年比プラスに変わりつつあ る。このため個人消費も回復の方向にある。
6. 今回の関西の景気拡大は、持続期間が比較的長い拡大期の一つになりつつある。過去において景 気の転機をもたらした海外経済の失速、増税などの政策ショック、バブル崩壊などの状況と今回 を比較すると、予想されるマイナス要因は規模が小さい。
7. 関西経済は 2006 年度も景気拡大が持続し、実質経済成長率は 2.0%とみられる。経済成長の姿 は、景気拡大の初年度であった2002 年度にはまだ外需中心であったが、景気拡大が 5 年目に入 る2006 年度には、設備投資の増加に加えて、個人消費も回復し、内需主導の傾向が強まるとみ られる。
関西経済研究センター所長 吉本 澄司
副主任研究員 西浦 瑞穂
1.関西の景気の現状~「踊り場的状況」脱却の道筋が開けてきた
関西経済の回復は、2002 年初めから製造業、とりわけ大企業主導で始まり、業種別では非製造業、
規模別では中小企業へと景気拡大の波及効果が広がってきたが、2004 年以降、景気拡大を主導して きた製造業に、デジタル関連分野の在庫積み上がりや海外経済の減速による輸出の増勢鈍化などの懸 念材料が持ち上がった。
この結果、関西では 2004 年半ば頃から、「景気拡大を持続させようとする動き」、「上向きの力」
と、「景気拡大を頓挫させる可能性がある動き」、「下向きの力」がせめぎ合う、いわば綱引きの状態 となり、景気は「踊り場的状況」
となった(図表1)。
デジタル関連分野以外を含む全 体の在庫循環の動向を見ても、過 去 1 年余りは、在庫が積み上がり 気味になりながらも、景気後退期 特有の本格的な在庫積み上がりと 生産調整に陥る手前で踏みとどま る微妙な動きが続いた(図表2)。
しかし、海外経済の減速が懸念さ れていたより緩やかにとどまった ことや、デジタル関連分野の在庫 調整が進んだことから、「下向きの 力」が増大する事態は避けられる 見込みとなってきた。
他方、景気拡大は企業部門から家 計部門へと徐々に浸透してきており、
「上向きの力」はより広範囲に及ん できた。このため、関西経済は「踊 り場的状況」脱却の道筋が開けてき ている。
図表1 関西の景気動向
85 90 95 100 105
2002 2003 2004 2005 2006
-60 -40 -20 0 20
(2000年=100) (%ポイント)
(資料)近畿経済産業局「鉱工業生産動向」、
日本銀行大阪支店「全国企業短期経済観測調査結果(近畿地区)」
(注) 日銀「短観」については、調査方法の変更により、2003年12月に段差 が生じている。以後の図表で「短観」を利用しているものについても同様。
業況判断D.I.(右目盛)
鉱工業生産(左目盛)
(年/期)
図表2 関西の在庫循環
▲ 15
▲ 10
▲ 5 0 5 10
▲ 15 ▲ 10 ▲ 5 0 5 10
(%)
(%)
在 庫(
前 年 同 期 末 比)
(資料)近畿経済産業局「鉱工業生産動向」
在庫積み上がり局面
在 庫 積 み 増 し 局 面 在
庫 調 整 局 面
意図せざる在庫減局面
生産(前年同期比)
1999年 1-3月期
1997年 4-6月期 2000年
10-12月期
2002年 1-3月期
2005年10月
(◆)
2005 年 7~9 月期までの生産など の実績値では「踊り場」脱却がまだ 鮮明ではないが、10~12 月期以降、
これらの指標からも「踊り場」脱却 の様相が浮かび上がってくると考え られる。
2. 「景気拡大を頓挫させる可能性がある動き」は弱まっている
(1)輸出の動向…2005 年 7~9 月期には減少がほぼ止まった
2004 年に生じた「下向きの力」のうち、はじめに、輸出の増勢鈍化について、輸出先別にその後 の動向を見てみよう。
米国経済は、2004 年に雇用増加と減税 効果に支えられた個人消費の好調などに よって4%台の成長を遂げた後、2005 年 には減税効果の剥落や素材価格上昇の影 響などにより減速しているが、全体とし て家計部門、企業部門の需要は底固く、
予想されていたよりも成長鈍化の程度は 緩やかである(図表3)。
図表3 米国経済(実質経済成長率)の見通しの変化
0 1 2 3 4 5
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
(%)
(年)
(資料)日本経済研究センター「民間調査機関予測集計(2004年12月、2005年11月)」
2004年12月の 見通し(平均)
2005年11月の 見通し(平均)
実績値
関西の米国向け輸出は、米国経済が高 成長だった2004 年ほどの勢いはないが、
2000 年以降のITブーム崩壊当時に比 べて米国経済が明るさを維持しているた め、大幅な減少に陥ることなく、堅調に 推移している(図表4)。
図表4 関西の米国向け輸出の動向
-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20
2000 2001 2002 2003 2004 2005
0 1 2 3 4 5 6 7
(前年比、%) (前年比、%)
(年/期)
(資料)大阪税関「貿易統計資料」、米国商務省HP
(注) 輸出(実質)は推計
輸出(名目)
(左目盛)
米国・実質GDP
(右目盛)
輸出(実質)
(左目盛)
中国経済は、2004 年に 9%を上回る高成長 となった後、2005 年には経済の過熱抑制策 や行き過ぎた投資の調整などによって8%程 度まで成長が鈍化するという見通しが出て いたが、依然として9%台の成長を続けてい る(図表5)。
関西の中国向け輸出は、中国経済全体の動 向に比べて振幅が大きい(図表6)。
その背景としては、日本企業の積極的な中 国進出に関連した輸出増加、建設投資など特 に増勢が著しかった分野への輸出増加など のプラス要因と、部品の現地調達の進展、輸
出が急増していた特定分野での過熱沈静化、生産過剰による意図せざる在庫発生といったマイナス要 因が交錯しているものと考えられる。2004 年半ば以降は後者の影響が勝って急速に鈍化したものと 見られるが、最近では持ち直しの動きが出ている。
図表5 中国経済(実質経済成長率)の見通しの変化
5 6 7 8 9 10
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
(%)
(資料)アジア開発銀行、IMF (年)
2005年9月の 見通し(平均)
2004年9月の 見通し(平均)
実績値
図表6 関西の中国向け輸出の動向
-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50
2000 2001 2002 2003 2004 2005
0 5 10 15 20 25
(前年比、%) (前年比、%)
(年/期)
(資料)大阪税関「貿易統計資料」、内閣府「海外経済データ」
(注) 輸出(実質)は推計 輸出(名目)
(左目盛)
中国・実質GDP
(右目盛)
輸出(実質)
(左目盛)
図表7 アジア経済(実質経済成長率、除く中国)の見通しの変化
1 2 3 4 5 6 7 8
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
(%)
(年)
(資料)アジア開発銀行、IMF、各国GDP資料
(注) アジア経済(除く中国)の成長率は、2000年から2004年の各国の 名目GDP(ドル表示、IMFによる)をウェートとして、韓国、台湾、香港、
シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアの実質経済成長率を 加重平均したもの。
2005年9月の 見通し 2004年9月の 見通し 実績値
中国以外のアジア諸国では、
素材価格上昇や年前半までの デジタル関連部門調整の影響 を受けて、米国経済や中国経済 に比べれば、2005 年の成長が 鈍化している(図表7)。
このため、関西のアジア向け 輸出(除く中国)は、米国向け、
中国向けに比べて弱含んでい るが、ITブーム崩壊当時のよ うな大幅な減少にはなってい ない(図表8)。
またデジタル関連部門の調 整進展によって、これら諸国の 経済に明るい兆しが出ること も期待される。
図表8 関西のアジア向け輸出(除く中国)の動向
-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30
2000 2001 2002 2003 2004 2005
0 5 10 15 20
(前年比、%) (前年比、%)
(年/期)
(資料)大阪税関「貿易統計資料」、内閣府「海外経済データ」、各国GDP統計
(注1) 中国以外のアジア・実質GDPは、2000年から2004年の各国の名目GDP(ドル 表示、IMFによる)をウェートとして、韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、
マレーシア、インドネシアの実質経済成長率を加重平均したもの。
(注2)アジア向け輸出(除く中国)は、アジア全体(除く中国)への輸出であり、上記の 7か国に限定していない。実質は推計。
輸出(名目)
(左目盛)
中国以外のアジア・実質GDP
(右目盛)
輸出(実質)
(左目盛)
その他の地域では、原油価格上昇の恩恵を受けて経済が好調な中東やロシア向けの輸出が高い伸び となっている。
以上の結果、関西の輸出(対世界、実質)は、2005 年 7~9 月期には減少がほぼ止まり、「景気に 対する下向きの力」としての影響は限定的になってきている(図表9)。
図表9 関西の輸出動向
-15 -10 -5 0 5 10 15 20
2000 2001 2002 2003 2004 2005
(年/期)(前年比、%)
(資料)大阪税関「貿易統計資料」
(注) 輸出(実質)は推計
輸出(名目)
(左目盛)
輸出(実質)
(左目盛)
(2)在庫調整の動向~電子部品・デバイスの在庫調整は一段落、生産全体でも増加へ
関西の生産関連の動向をみると、電子部品・デバイスで、2003 年後半から 2004 年 前半にかけて出荷を上回る生産増加が行 われたために、在庫の急激な積み上がりが 生じた(図表10)。
図表10 関西の電子部品・デバイスの動向
-125 -100 -75 -50 -25 0 25 50
2000 2001 2002 2003 2004 2005
-50 0 50 100 150 200 250 300
(前年比、%) (前年比、%)
(年/期)
(資料)近畿経済産業局「鉱工業生産動向」
生産(左目盛)
出荷(左目盛)
在庫(右目盛)
このため、2004 年半ば以降、在庫調整の ために生産抑制が行われたが、最近では、
在庫調整の進展に加えて出荷が回復して きているために、電子部品・デバイスの生 産は再び増加に転じている。
また、関西の生産全体を取り巻く環境に も改善が見られる。海外経済の減速は予想 されていたより緩やかにとどまり、7~9 月期には輸出がほぼ下げ止まった。
日本経済についても、景気拡大の浸透 によって、成長ペースは当初予想を大き く上回ってきている(図表11)。
図表11 日本経済の見通し(実質経済成長率)の変化
-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
(%)
(年度)
(資料)日本経済研究センター「民間調査機関予測集計(2004年12月、2005年11月)」
2004年12月の 見通し(平均)
2005年11月の 見通し(平均)
実績値 関西の生産は、出荷の鈍化や一部分野
での在庫調整の必要性から1 年余り一進 一退の状況であったが、10~12 月期以降 は徐々に増勢が明らかになってくると見 られる。
(3)原油高の影響~価格は高止まりしているが影響は限定的
原油価格の動向を見ると、WTIは 11 月以降おおむねバレル55~60 ドルで推移して おり、一時の高値に比べ 10 ドル程度低下し ているが、価格上昇が始まった2002 年初め と比較すれば、依然約3 倍の水準である(図 表12)。また円ベースの輸入平均価格は、最 近の円安の影響で、ドル建価格がやや低下し ているにもかかわらず上昇が続いている。
0 10 20 30 40 50 60 70 80
2002 2003 2004 2005
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5
(年/月)
(ドル/バレル) (万円/kl)
(資料)財務省「貿易統計」、NYMEX(ニューヨーク ・マーカンタイル取引所)資料 WTI(左目盛)
輸入原油平均価格(右目盛)
図表 12 原油価格の動向
こうした原油価格上昇は、最終段階の小売 価格まで転化が進めば家計部門が、また価格 転化が進まなければ中間の企業部門がそれ ぞれコスト増加分を負担することになり、日 本全体としては産油国に対して所得移転を 強いられることになる。
ただし、過去2回の石油危機当時に比べると、エネルギー効率の向上によって原油依存度が低下し ているため、原油価格上昇によって日本経済、ひいては関西経済が受ける影響は小さくなっている(図 表13)。
また、原油価格上昇の波及経路としては、国内への直接的な影響のほかに、海外経済に対する打撃 によって輸出に影響が及ぶという間接的なものもあるが、現状ではその影響は限定的である。
図表13 原油高による産油国への所得移転
-4 -3 -2 -1 0 1
1年 2年 3年 1年 2年 3年 4年 1年 2年 3年 4年
(資料)財務省「貿易統計」、内閣府「国民経済計算年報」
(名目GDP比、%)
中東への輸出増加
原油輸入額 増加
(産油国への所得移転)
純所得移転
第1次石油危機 第2次石油危機 今回の原油高
中東・ロシアへの輸出増加
3. 「景気拡大を持続させる動き」が強まってきている
(1)設備投資の動向~投資計画の上積みが進んでいる
関西の設備投資は、2002 年度はまだ減少傾向であったが、2003 年度に はまず製造業の設備投資が増加に転 じ、次いで非製造業も2004 年度には 増加に転じて、輸出に続く第2エン ジンとして関西経済を牽引する役割 を担ってきた。
まず今回の景気拡大局面における 製造業の設備投資計画の動きを振り 返ってみると、景気拡大が始まって からまだ1年程度であった 2003 年度 当初計画の段階では小幅の増加にと ど いたが、景気拡大が確かな も るにつれて投資計画の上積 みが進み、2003 年度は最終的には大 幅な増加となった(図表14)。
これに対して 2004 年度は、2003 年度の流れを引き継いで、当初計画 の段階から前年の同時点より強めの 数字で始まり、年度途中での投資計 画上積みも進んだが、景気が「踊り 場的状況」に陥ったことを受けて実 施されなかった部分も出たと見られ、
最終的には当初計画程度の増加に戻 った(図表15)。
2005 年度は、当初計画の段階では 景気が「踊り場的状況」であったた めに、小幅な増加計画であったが、
でいる。
鉱工業生産は2005 年度下期にはより明確な増加基調に戻ると見られるため、製造業の設備投資は 好調さを持続するものと見られる(図表16)。
図表14 関西の製造業設備投資計画(2003 年度)の動向
図表15 関西の製造業設備投資計画(2004 年度)の動向 -5
0 5 10 15 20 25
2002 2003 2004
-20 -15 -10 -5 0 5 10
(前年比、%) (前年比、%)
(年/期)
(資料)日本銀行大阪支店「全国企業短期経済観測調査結果(近畿地区)」、
近畿経済産業局「鉱工業生産動向」
年間設備投資計画
(左目盛)
鉱工業生産(右目盛)
当初計画 前年度計画 変更の影響
当年度 計画変更
誤差
まって のにな
-5 0 5 10 15 20 25 30
2003 2004 2005
-6 -4 -2 0 2 4 6 8
(前年比、%) (前年比、%)
(年/期)
(資料)日本銀行大阪支店「全国企業短期経済観測調査結果(近畿地区)」、
近畿経済産業局「鉱工業生産動向」
年間設備投資計画
(左目盛)
鉱工業生産(右目盛)
当年度 計画変更 前年度計画
変更の影響 当初計画
誤差
「踊り場脱却」の期待が強まるにつれて、投資計画上積みが進ん
一方、非製造業については、業況 図表16 関西の製造業設 の回復が製造業に比べて緩やかにし
たが、景気 拡
、製造業、非製 造業ともに力強さを増してきており、
輸
備投資計画(2005 年度)の動向
か進まなかったため、設備投資の増 勢も弱い状況が続いてい
図表17 関西の非製造業設備投資計画の動向 0
5 10 15 20 25 30
2004 2005
-6 -4 -2 0 2 4 6
(年/期)
(資料)日本銀行大阪支店「全国企業短期経済観測調査結果(近畿地区)」、
近畿経済産業局「鉱工業生産動向」
年間設備投資計画
(左目盛)
鉱工業生産(右目盛)
35 8
(前年比、%) (前年比、%)
当初計画 前年度計画 変更の影響
当年度 計画 変更 誤差 大の波及の広がりを受け、2005 年
に入って業況判断D.I.がようや くプラスに転じ、投資計画の上積み も従来に比べて大きくなりつつある
(図表17)。
関西の設備投資は
出に代わって景気拡大の最大の推 進力になりつつある。
(前年比、%) (%ポイント)
-4 -2 0 2 4 6 8 10
2004 2005 2005
-12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2
(年/期)
(資料)日本銀行大阪支店「全国企業短期経済観測調査結果(近畿地区)」
年間設備投資計画
(左目盛)
業況判断D.I.(右目盛)
当初計画 前年度計画 変更の影響
当年度 計画 変更
誤差
( 人消費の動向~景気拡大の波及効果が及んできた
に改 05
. 倍
。
者
、 者数や1人あた り賃金の前年比マイナス縮小という形で しか表れていなかったが、2005 年には前 年比プラスに変わりつつある(図表19)。
人消費も、趨勢としては回復方向 動いてきている(図表20)。
気拡大の家計部門への波及が進んで きたことにより、関西の景気は安定性を 増してきている。
2)個
景気拡大の動きは、関西の家計部門 も波及している。
関西の有効求人倍率や雇用人員判断 I.は、景気が拡大局面に入ってから 善基調をたどっている(図表18)。20 年になってからは、雇用人員判断D.I が不足超過に転じ、有効求人倍率も1 に近づいている
図表18 関西の労働需給の動向
D.
労働需給改善の持続を受けて、雇用 数や1人あたり賃金にも回復の動きが見 られるようになっている。これまでは
景気拡大の波及が、雇用 図表19 関西の雇用・賃金の動向
-8 -6 -4 -2 0 2
2002 2003 2004 2005
-10 -5 0 5 10 15
(前年比、%) (前年比、%)
1社あたり人件費(右目盛)
雇用者数(左目盛)
1人あたり名目賃金
(左目盛)
(年/期)
(資料)総務省「労働力調査」、大阪府「大阪の賃金、労働時間及び 雇用の動き」、
近畿財務局「四半期別法人企業統計調査(近畿管内)」
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
2000 2001 2002 2003 2004 2005
-20
-10
0
10
20
30
(倍) (%ポイント)
(年/期)
有効求人倍率(左目盛)
雇用人員判断D.I.
「過剰」マイナス「不足」
(右目盛:逆目盛)
(資料)日本銀行大阪支店「全国企業短期経済観測調査結果(近畿地区)」
「近畿統計データ集」、厚生労働省「一般職業紹介状況」
図表20 関西の個人消費の動向
個 に
景
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6
2002 2003 2004 2005
(前年比、%)
(年/期)
勤労者世帯・消費支出
家電・家具・自動車関連を除いた 消費支出の4期後方移動平均
4. 「踊り場」脱却後の展開をどう見るか
産、業況判断D.I.
が 年1~3 月期をボトムに改善して い
つつある。
社会保険料負担増加の集中という言わば政策ショック、そ の崩壊と金利上昇と、それぞれ異なっている。
ーンが2005 年度から 2006 年度の関西経済に起こる可能 のか、検討を行う。
の動向については既に詳しく述べたため、前々回の景気拡 負担増加の集中から順に見てみよう。
小、年金保険料引き上げなどによって、家計可処分所得対
の波及が家計部門に も及ぶようになってきているとはいえ、
こうした税・社会保険料負担増加は個人 消費の増勢を抑制する要因として、軽視 できない大きさである。
だし、1997 年当時に実施された税・
社会保険料負担増加の集中が家計可処分 対比でおおよそ 2.5%程度という大きな ものであったことと比較すると規模は小 さく、政策ショックで景気を失速させる 可能性は小さいと考えられる(図表22)。
図表22 1997 年前後の関西経済の動向 関西では鉱工業生
2002
るため、この時点を景気の谷と考える と、2006 年には景気拡大がまる 4 年(16 四半期)に達し、5 年目に入ることにな る(図表21)。
持続期間という点においては、比較的 長い拡大局面になり
図表21 に掲げた過去 3 回の景気拡大 局面を終わらせることになった要因は、
前回(山は2000 年 10~12 月期)が海外 経済の失速による輸出の大幅な減少、
前々回(山は1997 年 4~6 月期)が税・
の前(山は1991 年 1~3 月期)はバブル そこで、こうした典型的な景気失速パタ 性がある
前回の景気拡大の失速要因となった輸出 大を失速させた税・社会保険料
2005 年度、2006 年度には、定率減税縮 比で0.4~0.8%程度の負担増加が見込ま れている。景気拡大
た
-3 -2 -1 0 1 2 3 4
1995 1996 1997 1998 1999 2000
(前年度比、%)
(資料)内閣府「県民経済計算年報」 (年度)
県内総支出(実質)
個人消費(実質)
図表21 関西の景気拡大局面の比較(業況判断 D.I.)
-60 -40 -20 0 20 40 60
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
(%ポイント)
(期)
3回前 1986.10-12
~1991.1-3
今回 2002.1-3~
前回 1999.1-3
~2000.10-12
前々回 1993.10-12
~1997.4-6
(資料)日本銀行大阪支店「全国企業短期経済観測調査結果(近畿地区)」
(注)景気基準日付は全国
(注)グラフは 2005.7-9まで
次に、金利動向については、今
23 1989 後、消費者物価の前年比がプラス
に
れても、短期金 利
られ、3回前の景気拡大の転機
(
え
た、当時はバブル崩壊が景気後 退
る
燃と い
図表 年以降の金融情勢と最近の比較 な っ て く る こ と を 受 け て 、
2001 年 3 月以降続けられてきた 金融の量的緩和政策が解除され る可能性が論じられ始めている。
しかし、2006 年度に量的緩和 政策の解除が行わ
はほほゼロ%、金融は緩和状態 という期間がしばらく続くと見
1991 年 1~3 月期)に先立っ て金融引き締めが強化された状 況とは大きく異なる展開が予想 される(図表23)。
量的緩和政策の解除が関西経済の
失速につながる可能性は小さいと考 図表24 1989 年以降のバブル崩壊と最近の比較 られる。
ま
の大きな誘因になったが、最近の 資産価格は持ち直し傾向となってい
(図表24)。
金融緩和が続く中で、個人投資家 による株式の回転売買の活発化や、
部分的ではあるが地価上昇ペースの 高まりが見られるようになっており、
過熱を懸念する見方も出始めている が、現状では大規模なバブル再
うより「フロス的現象」にとどま っているとみられる。
以上のように、海外、財政、金融、資産 化要因が生じる可能性は小さいため、景気
価格などの面で、関西の景気を失速させるような急激な悪 は基調としては拡大が続くと見られる。
-20 1989
(資 -10
0 10
1990 1991 1992 2004 2005
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
ント) (%)
料)日本銀行大阪支店「全国企業短期経済観測調査結果(近畿地区)」、
日本銀行「金融経済統計月報」
コールレート(右目盛)
業況判断D.I.
(左目盛)
金融機関の 貸出態度判断D.I.
(左目盛)
金融機関の 貸出態度判断D.I.
(左目盛)
業況判断D.I.
(左目盛)
20 30 40 50
(%ポイ
コールレート(右目盛)
(年/期)
-20 0 10 30 40 50
1989 1990 1991 1992 2004 2005
0.5 1.0 1.5 2.0 5 3.0 3.5 4.0
(%ポイント) (万円)
(資料)日本銀行大阪支店「全国企業短期経済観測調査結果(近畿地区)」、
日本経済新聞社資料 日経平均株価
(右目盛)
業況判断D.I.
(左目盛)
(左目盛)
-10
20 2.
業況判断D.I.
日経平均株価
(右目盛)
(年/期)
5.2006 年度の関西経済の
こうした情勢のもと、2006 年度
(1) 個人消費
個人消費は、税・社会保険料負担の
展望
の関西経済を展望すると、以下の通り。
増加によ
っ 当たり賃金
報酬の回復 実質で 1.2%
回る伸びと
企業収益増加を背景 に
る投資案件も増えると ることから、2005 年度(8.6%)
び には好調
である。
計画の一
「踊り場」入りによって実施さ えられた 却によっ 004 年度
面もある。
国経済が緩やかに減速 してソフトランディングし、世界経済も大きく 混
通しである(図表27)。
て伸びが抑えられるものの、1人 と雇用者数の増加によって雇用者 傾向が続くために、2006 年度は 増と、2005 年度(1.0%)をやや上 なる見通しである(図表25)。
(2) 設備投資
設備投資は、景気拡大と 増加基調が続くと見られる。
2006 年度は設備投資増加が 4 年目 実施済みとな
に入り、
予想され ほどの高い伸 にはならないと見られるが、基本的
を持続し、実質で5.5%増となる見通し
(注)2005 年度は、①2004 年度の投資 部に、景気の
れなかった部分が生じて水準が抑 反面、②2005 年度は「踊り場」脱 て投資上積みが進んでいるため、2 対比の伸び率が押し上げられるという
(3) 輸出
輸出は、米国経済や中
図表 27 輸出の見通し(前年比)
図表 25 個人消費と所得の見通し(前年比)
▲ 12
▲ 10
▲ 8
▲ 6
▲ 4
▲ 2 0 2
2001 2002 2003 2004 2005 2006
▲ 1.0
▲ 0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
(予測) (予測)
(年度)
(%)
(資料)内閣府「県民経済計算年報」
実質個人消費(右目盛)
雇用者報酬(名目)(左目盛) (%)
図表 26 設備投資の見通し(前年比)
▲ 25▲ 20
▲ 15▲ 10▲ 51005 ▲ 10
▲ 50 510 1520 25
(資料)内閣府「県民経済計算年報」、近畿経済産業局「鉱工業生産動向」、
日本銀行大阪支店「全国企業短期経済観測調査(近畿地区)」
(%) (%ポイント)
日銀短観・設備投資判断DI
「過剰」-「不足」
(右目盛、逆目盛)
鉱工業生産指数(前年比、左目盛)
(%)
▲ 5 0 5 10
2001 2002 2003 2004 2005 2006 (予測) (予測)
(年度/期)
実質設備投資
(左目盛)
2 4 6
(資料)内閣府「県民経済計算年報」、大阪税関「貿易統計資料」、
IMF"World Economic Outlook"(2005年9月)
(注)IMF見通しは暦年。2005・2006年は予測値。
(%)
世界 実質経済成長率(右目盛)
▲ 15 5 10 15
2001 2002 2003 2004 2005 2006 (%)
(予測) (予測)
(年度)
)
乱することなく安定成長を続けると見込ま
れることから、2006 年度は実質 4.5%増の見 ▲ 10
▲ 5 0
実質輸出(左目盛
(4
住宅着工は、持家が住宅ローンの段階的縮小
などから前年を下回る一方、分譲は都心回帰 マンションが増加しており、戸 数
(5 公共投資
いてみると、2005 年度には前 年
的に増加した 期
5.5 から
2
(図
) 住宅投資
図表 29 公共投資の見通し(前年比)
図表 28 住宅投資の見通し(前年比)
を意識した駆け込みによる需要の先取りの影 響
の動きを背景に
全体としては増加している。
ただし、1 戸あたり住宅投資額が大きい持家 の構成比が低下するため、住宅投資額は戸数ほ ど増加せず、2006 年度は実質で 0.0%(前年 水準程度)となる見通しである(図表28)。
)
公共投資につ
の台風被害の災害復旧工事があったことな どから公共工事請負金額が一時
も出たが、政府・地方自治体の歳出抑制の一 環として、基本的には縮減の方向にある。
ただし、公共投資の対名目GRP 比率は 4.8%
(2002 年度)と、公共投資基本計画や景気対 策の影響で公共投資が大幅に増加した1990 年 代以前の水準(1985 年度 5.3%、1990 年度
%)を下回る水準にまで低下していること
、減少ペースは緩やかになると見込まれる。
006 年度は実質で 5.9%減の見通しである 表29)。
▲ 12
▲ 9
▲ 6
▲ 3 0 3
2001 2002 2003 2004 2005 2006
(%)
(予測) (予測)
(年度/期)
実質公共投資
(左目盛)
(資料)内閣府「県民経済計算年報」、西日本建設業保証(株)
資料
▲ 25
▲ 20
▲ 15
▲ 10
▲ 5 0 5 10
(%)
公共工事請負金額(右目盛)
2 4 6 (%)
公共投資対GRP比(名目、左目盛)
▲ 6
▲ 4
▲ 2 0 2
2001 2002 2003 2004 2005 2006
(%)
(予測) (予測)
(年度/期)
(資料)内閣府「県民経済計算年報」、
国土交通省「建設統計月報」
実質住宅投資(左目盛)
(0.0%) ▲ 15
▲ 10
▲ 5 0 5 10 15
(%)
新設住宅着工戸数 新設住宅着工
(右目盛) 床面積(右目盛)
(6) 実質経済成長率
006 年度も景気拡大が持続し、実質経済成長率は
2002 年度が外需中心であったのに対して、2003 年度 与し始める姿に変わり始めた。2005、2006 年度は、
内需主導の傾向がより強まるとみられる(図表31)。
以 上 度 2005年度 2006年度
(実績推計) (予測) (予測)
2.1 2.2 2.0 0.6 1.0 1.2
住宅投資 1.0 0.5 0.0
設備投資 4.8 8.6 5.5
在庫投資 0.4 ▲ 0.1 0.1
政府消費 1.9 1.8 1.4
公共投資 ▲ 12.0 ▲ 5.5 ▲ 5.9 0.9 0.4 0.4 12.5 4.3 4.5 0.8 0.1 0.8 9.5 3.6 4.0 0.9 0.9 2.0
)。
002年度分が最新であり、2004年度は当社による実績推計。
関西経済は2 2.0%とみられる(図表 30)。
経済成長の姿は、景気拡大の初年度であった からは設備投資が増加に転じて内需も成長に寄 設備投資の増加に加えて、個人消費も回復し、
図表 30 関西経済の見通し
(%)
2004年 実質GRP
個人消費
純輸出・純移出 輸出・移出
うち輸出 輸入・移入
うち輸入 名目GRP
(資料)内閣府「県民経済計算年報」
2.0 0.6 1.3
(注1) 関西は2府4県(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山
(注2) 本予測のベースとなる県民経済計算の実績公表は2 輸出・移出、輸入・移入の内訳は当社推計。
(注3) 在庫投資と純輸出・純移出は前年比寄与度。
図表 31 関西経済の見通し
▲ 4
▲ 3
▲ 2
▲ 1 0 1 2 4
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 (年度)
(資料)内閣府「県民経済計算年報」
(注)2003・2004年度は当社による実績推計。2003年度経済成長率は、「統計上の不突合」を除くベース。
設備投資 3
(%)
経済成長率
個人消費 純輸出・純移出
その他
(予測) (予測)