日韓関係の望ましいあり方
福島県日韓親善協会 2014年度 通常総会(2014.6.5) 総領事 講演
皆様、こんにちは。
只今ご紹介に預かりました駐仙台大韓民国総領事の李凡淵と申します。
先ずは福島県日韓親善協会2014年度通常総会の開催を心よりお祝い申し上げます。こ のような場で講演という形で日韓関係について申し上げるには、微力な私ですが、機会を 頂いたことを光栄に思います。ご招待頂きました丹治一朗会長をはじめ、会員の皆様に感 謝申し上げます。2年前の講演では至らない私の日本語で皆様にご迷惑をかけてしまいま した。改めて今日もまた最善をつくし頑張ってみたいと思っております。どうぞよろしくお願い 致します。
この度の「セウォル号」事故に際し、多くの日本の方々から慰めのお言葉を頂きました。
東京の大使館や各地の総領事館内に設けられた焼香場には多くの方々がお越しになり犠 牲者のご冥福をお祈りされました。安倍総理も大使館の焼香場へお越しになりお悔やみの 言葉を頂きました。また仙台市内のある高校の学生達は「千羽鶴」を折り、犠牲になった 韓国の高校に届けて欲しいと、当館へ預けにきました。勿論、中には韓国のこの悲劇的 状況に対して「三流国家」などと皮肉を言う人々もいましたが、それ以上に多くの方々か ら暖かい慰めの言葉を頂きました。本日のこの場をお借りし感謝申し上げます。
日韓親善協会会員の皆様、
困難に陥った時に手を差し出す友こそ真なる友と言えます。韓国と日本両国の間には歴史 問題、領土問題など、互いに異なる見解から成る問題が残っています。ところが、困難な 状況では助け合い慰め合うといった心は、韓国人も日本人も共に持つ精神だと思います。
2011年の東日本大震災当時、多くの韓国人は自発的に集めた支援金や救護物資を被 災地に送り、政府は救護物資および救助隊を派遣しました。困難を乗り越えられるよう助け 合う心に、国境はありません。
また、友は選べても隣人を選ぶことはできないということもあります。自分が他所へ移る以外 は、隣人の存在を認め可能な限り仲よく協力し合うのが大切です。安倍総理夫人の昭恵 さんも、以前、この様に発言されました。「色々な意見があると思いますが、隣国ですの で仲良くしていきたい」。私はこれに全面的に同感します。皆様はどう思われますか?
福島県日韓親善協会会員の皆様、
私は、一昨年2月駐仙台大韓民国総領事として赴任し、東日本大震災の苦しみと悲しみ を目の当たりにし、地域復興に微力ながらもお力添えできればという想い、そして韓日両国 民、特に我々の次世代が互いに心を開き真なる隣人、そして友達として力を合わせ、より 明るい未来を築いていけるよう、努力して行こうと強く誓いました。
そして両国民間の交流を中心に、様々な分野で友好親善のために努力してきました。しか しながら福島においては、福島空港と韓国をつなぐ定期便運航再開は未だ難航しておりま す。2012年のチャーター便運航を発端に、昨年は数回運航されました。今年は7月に2 回の運航が予定でありましたが、先月予想しなかったことでキャンセルされました。航空会 社からは「引き続き努力して行きたい」と伺いました。 皆様からもご関心とご支援をお願 い致します。
総領事館がある宮城県では、東北地域の名産品を使った韓国料理講習会を3年にわ たって開催しております。昨年11月には「仙台白菜で作る韓国キムチフェスティバル」を 仙台市で開催し、日本経済新聞からも東北復興支援の一つの良い例として評価を受けま した。また先月には石巻の仮設住宅で石巻産ホヤでビビンバを作る講習会を開きました。
そちらには李丙琪駐日大使も参加し、結果的には東北水産物の安全性を内外にアピー ルすることとなりました。
福島県日韓親善協会会員の皆様、
今は亡くなった私の父は、20才という若さで自分の意志に反して日本軍隊へ徵集され、当 時の満州や北朝鮮地域に終戦まで駐屯しました。私は幼い頃から父より、日本軍隊内で 朝鮮人への差別や苦しい生活そして韓国語は勿論自分の名前さえ使わせてもらえず日本 式の名前を使わされたことなどの話を聞きながら育ちました。「日本」というのは、幼い私 にその様な形で近づいてきました。これは私にとっては、 「反日教育」ではなく、「現 実」なのでした。
大学を卒業して外交部に入り、日本との外交を担当する部署で勤務しました。そこでまた 日本との縁が始まり、のちにアメリカに渡り、日本学を専攻し日本について学びました。そ れから8年後東京の韓国大使館で勤務しましたが、また日本を離れカナダやオ-ストラリア などを回りました。15年ぶりに一昨年の2月仙台の総領事として赴任しました。実は韓国で も福島原発事故の風評被害の報道があり周辺からの心配はありましたが、私は伊達政宗 の国に赴任するということでわくわくする気持もありました。
この様な縁があるのは、私に総領事として果たすべき課題が沢山あるからだと想います。そ れは、父の世代が経験した日本との不幸な縁を克服し、国民的信頼関係の基礎を築き、
「共存と協力の関係」といった韓日の新しい未来を切り開いていくことに邁進するようにと言う ことでしょう。しかし、私のこの課題は、私一人の力で完成できることではありません。こちら にいらっしゃる皆様の様な両国関係を憂慮している多くの方々と力を合わせ進めていかなくて はいけないと思います。
韓日関係は国交正常化以来、様々な難関を乗り越え発展してきました。どころが、両国 は今日(こんにち)激変する国際環境の中で新たな協力関係を模索すべきの大きな挑戦 に直面しています。その様な状況で両国は、国民間の交流を絶やさず続け、それによって 築かれた相互間の理解と信頼が揺るぎないものとなれば、両国間の問題を円満に解決し ながら発展できることと確信します。
日韓親善協会会員の皆様、
私が学び、また経験した「日本」、そこには誇りに思うべきものがとても沢山ありました。長 い歴史と伝統、そして文化また社会全般において世界の多くの国々の人が羨む先進国家 です。100%のうち95%以上は誇るべきものだと思います。
日本はアジアで最も早く近代化を成し遂げ、経済と社会全般において発展を達成しまし た。美しく、輝かしい文化遺産や観光資源、そして昨年キムチ作り文化と共に世界文化 遺産に登録された和食、清潔な街並、親切な人々、安全かつ速い新幹線、安全な治 安、市民の安全意識と秩序意識、他の国には存在しない平和憲法そして経済発展、多 数のノーベル賞受賞者、宮崎駿監督とアニメ、村上春樹の小説、世界1の自動車産業 をはじめとする製造産業、スポーツなど、日本が誇るべきものは数え切れません。
こればかりではありません。日本は欧米の文物を受け入れながらも、思想と知識に関する欧 米の言葉を漢字の単語に改めました。その時に作られた単語で「民主主義」や「社会主 義」などの思想に関する表現、「太平洋」や「大西洋」などの地名は勿論、「議 会」、「憲法」、「政府」、「政党」、「総理」や「長官」などの政治的な言葉、
「浪漫」、「美術の抽象や印象」、「文化」、「哲学」、「空間や時間」、「道 徳」、「義務」、「観念」など文化や生活で今よく使われる言葉は、現在 韓国は勿 論、漢字が生まれた中国でさえも使われていて、アジア漢字文化圏に大きく寄与しました。
これはルネッサンス文化を花咲かせヨーロッパ全域に広げたイタリア・フィレンチェの様な役割 を果たしたといえることでしょう。
しかし実に残念なことは、多くの日本の方々は、これまでこのような誇りを把握できず、5%
程度の過ちで持って、ほとんどの時間やエネルギーを費やしています。 この5%は歴史 認識から来る問題です。過去の事実を勇気を持って認め、対処し、現在の誇るべき自分 を示すべきです。そうすれば、100%の誇りにより真なる成熟社会となることでしょう。
去る3月、韓国で実施された世論調査では、日本に対するイメージが決して悪くないことが 示されました。「韓日両国が互いに助け合い協力して行くべきだと思うか?」という質問に 88%が「そう思う」と答えました。日本でよく言われているように「反日教育」をしているな らば、この様な結果はでるはずがないと思いませんか?実際に私の父も生前に国を失った 民族の苦しみに関しては話しましたが、日本人に対して悪口は言っていませんでした。
ただし、また、80%以上の韓国人は日本に対して「歴史問題や領土問題の解決のた め、誠意ある努力を期待している」と答えています。過去の事実を認めることは恥じること でも損をすることでもありません。むしろ長い目でみれば、計り知れない大きな利益となり財 産を得ることになります。ただ、「知らない。」「知りたくない」「私とは関係ない」「日 本は悪くなかった」「他の国も同じことをした」などの言い訳を繰り返しても、過去の事実 は消えません。
福島県日韓親善協会会員の皆様、
本日この場をお借りし、韓日両国の明るく健全な関係のため、一つ提案をさせていただき たいと思います。
現在、両国の言論やネット上には相手に対する否定的な表現が多く見られます。 今、私 が日本にいて、日本の新聞や放送、雑誌やネット上の書き込みなどを主に目にしますが、
日本のネット上には韓国や中国を蔑視する言葉が溢れ、書店の棚には「嫌韓を論する 本」が平積みになっています。日に日に韓国と韓国人に対する非難、歪曲や揶揄など悪 意に満ちた内容が数多く目につきます。たまには失笑を禁じ得ない内容があり日本らしくな いことです。ところが、この間韓国で発刊された主な月刊紙や週刊誌には反日記事は見 られません。最近私が行ってみたソウル市内の大手書店のベストセラ-100以内にも反日 の本はありませんでした。
「表現の自由」も守られるべきではありますが、それらにより被害を受ける多くの人々のこと も考えないといけないのではないかと思います。最近、漫画の「おいしんぼ」のケースでも 同じく思いましたが、大変遺憾な現状です。今こそ日本のすばらしい価値観、「思いや
り」が必要な時です。
勿論、韓国は日本に比べて、経済や社会全般に掛けて様々な面で未熟な部分が多くあ ります。それにしても日本のマスコミや出版社、ネットなどの「コリアバッシング」は衝撃的 で度を越えていると思います。これは、韓国の方が中国より近く敵にしやすいからだと日本 のあるジャーナリストが言いました。誠に残念に思います。
例をあげれば、仲が悪い夫婦関係は、互いによくない部分のみを指摘や非難し合ったりま たは乱暴な言葉を口にすることから始まり、短所の非難ばかりするよりは、先ず長所を見つ けそれを相手に丁寧に表現することから始めると、関係は改善するはずです。ちなみにこれ は、私自ら家内との関係で、確認されたものですので、韓日両国間でも適用されると確 信しております。
では今から、我々が共にマスコミやネット上に、お互いに関して「良いコメントをし合おう」
キャンペーンを進めてみるのはいかがでしょうか?韓国より成熟した日本からまず先に始めて みるのもよいでしょう。これによって、我々自身や周辺が変わり、両国関係も変えていくこと になると思います。自ら変わらなければ変えられません。勿論、韓国の人々もすぐに従うと 信じております。
この地球上で「尊敬語」を持つ言語は韓国語と日本語のみと聞きました。「尊敬語」とい うのは相手を尊重する一言で、聞き手を動かし、世の中を暖かくするものです。また話し手 自分の人格や尊厳も守ることもできます。この様にすばらしい言語習慣を持つ韓国と日本両 国の人々が今の様に、美しい言葉を使わず、適切でない表現を使っていることはとても残念 でなりません。互いに「尊敬語」を使い「良い書き込み」をするキャンペーンをはじめてみま しょう。
長らくご清聴ありがとうございました。
私は未だ学ぶべきものも多く、経験も浅いのですが、これからも両国民間の友好と親善の ため努力していく所存です。この場にご参加の皆様の多大なるご支援とご協力をお願い申 し上げます。
最後となりましたが、本日の総会ならびに懇親会の開催を再度お祝い申し上げ、この場へ ご招待いただきました丹治一朗会長に感謝致します。
また福島県日韓親善協会の発展と皆様のご健康とご多幸をお祈りします。
고맙습니다。