要 約
庶民経済の安定のための地域商圏の活性化方案に関する研究
李昤妵, 任垠善
最近、流通環境は伝統市場、中小スーパーなど生計依存型の流通構 造から徐々に百貨店、ディスカウントストア、コンビニエンススト アなどの企業型流通構造に変化している。このような流通構造の変 化は施設、環境、サービスなどが企業型流通構造に比べ零細で立ち 遅れている伝統市場及び中小流通業の生産性・根本的な競争力の悪 化を招いている。
また、このような変化は地域経済の根拠地である伝統市場を沈滞さ せるだけではなく、自営業者の没落、地域の景気低迷と失業の増加 などに繋がる。これは、地域の商人たちの生存を脅かすほどで、地 域経済に深刻な影響を及ぼしている。
中小商人の貧困層化が加速され、中小流通業が国民経済に占める比 重が非常に大きいことを考え、韓国政府は2010年から「伝統市場及
び商店街の育成のための特別法」を改正して、“商圏活性化区域”と いう制度を施行している。また、2010年11月には｢流通産業発展法｣
と「大·中小企業の相生協力の促進に関する法」を改正して“伝統商業 保存区域”という立地規制制度と事業調整制度を導入した。
しかし、これらの制度の実効性を高めるためには、関連制度が実質 的に地域商圏を保護することができるかについての綿密な分析と検 証が必要である。このような背景から本研究の目的は、流通市場の 状況と関連制度の変化が地域商圏に及ぼす影響を実証的に分析し、
地域商圏を支援する政策の効果をシミュレーションすることであ る。また、これに基づき庶民経済の安定のための政策的·制度的な地 域商圏の活性化戦略と支援方案を模索する。
本研究では、小商工人の経営状態や消費者の行動に関するアンケー ト調査を基に、地域商圏の実態を分析し、地域商圏と関連して提起 さ れ て い る 問 題 点 の 深 刻 性 を 確 認 し た 。 ま た 、 G I S と ABM(Agent-Based Model)を活用し、地域商圏を取り巻く制度環境を シミュレートすることで、より客観的かつ合理的な制度改善案を導 出した。併せて、地域商圏の活性化のための基本方向「共生・循環 型地域親和の商圏作り」を確立し、地域商圏の活性化戦略と課題、
そして政策の支援策を導出した。
本研究の政策的な期待効果は次のようにある。第一に、地域の与件 に合った商圏活性化政策の推進によって、地域競争力を確保するこ とができる。第二に、韓国政府の100大国政課題の一つである脆弱階 層の経済活動を支援し、庶民中心の商業環境づくりで庶民経済の安 定に寄与することができる。第三に、公正な市場環境の造成及び流 通産業の共生方策を策定したことである。第四に、商圏活性化区域 制度の実効性の確保と制度改善のための方案を提案したことであ る。これにより、今後の商圏活性化区域を申請する自治体にガイド
ラインになろう。
一方、本研究結果の学術的な寄与点は、まず、ABMシミュレーショ ン手法を商圏活性化政策の効果分析に適用して、現実問題を定量的 かつ科学的に分析することができる方法論を提案したことである。
また、都市計画の用途地域地区の設定などの物理的な計画中心から 離れて、文化的・経済的な計画を小地域に組み合わせて商圏を特性 化させるコンセプトモデルを提示したことである。
本研究で提案された地域商圏の活性化戦略と政策は、政府レベルで の制度的な裏付けと地方政府の政策的意志に基づいて実行しない政 策の実効性がない可能性がある。本研究は市場原理により公共サイ トの介入は限定的であることを考えて政策支援方案を提案した。制 度改善と政策支援策は、政策の緊急性など優先順位を考慮して短期 と長期に分けて政策ロードマップを提示した。
今後の地域商圏が競争力を備え、市場経済の下で持続可能な自活力 を得る為には、関連制度の改善と実行方法に関するフォローアップ 研究が必要である。特に、地域商圏の特性と種類を細分化できる指 標と方法論を発掘する必要があり、商圏変化に伴う地域住民の商業 サービス提供の地域間偏差に関する実態調査が必要であろう。ま た、商圏活性化事業が地域経済に及ぼす影響（効果）を推定するモ デル開発なども必要である。