平成21年度地域活性化推進事業
東アジアと九州を繋ぐブリッジ人材醸成のための
留学生等海外高度人材活用方策調査 報告書
平成 22 年 3 月
は じ め に
企業の国際競争やグローバル展開が加速し、世界規模でイノベーションを先導する人材等の獲 得競争が進展する中、世界的な視点での人材育成・確保に向けた環境の整備が必要とされていま す。
こうした中、九州地域は地理的にアジアに近いという優位性を活かしつつ、アジアビジネスの展開 などを通じてアジアの活力を取り込み、共に成長・発展していくことが期待されており、アジアとの架 け橋となり得るグローバル人材の活用・育成が急務となっています。
現在、九州で学ぶ留学生は、15,140 人で全国の約 11%を占めていますが、卒業後は大都市圏 への流出が多く、九州企業への就職は全国の約 4%に止まっているのが現状です。
この背景としては、地域企業に関する学生の認知度が依然として低いことや、企業側にも留学生 の活用策についての認識が不足していることが考えられます。
一方、グローバル化に対応しようとしている企業は、国内に留学している外国・地域からの留学生 を活用することのみならず、進出先の外国・地域の大学・大学院新卒者及び既卒経験者等を活用し ております。
今後、地域の中小企業等においても、海外の知見を有する人材を活用することは、企業の発展 に向けた有力な選択肢の一つであり、留学生についても様々な事例を踏まえつつ、自社における 活用方策を検討いただくことも重要ではないかと考えます。
このような状況を踏まえ、本調査事業においては、留学生及び既卒経験者など海外高度人材の 活用に係る現状及び課題、企業ニーズ等を整理し、海外高度人材の活用促進に向け、企業や大学、
行政など各分野において取り組むべき方策を検討の上で提示しました。今後、こうした方策の実現 に向け、関係各機関との連携・調整に取り組んで参ることといたしております。
また併せて、これから海外高度人材の活用を検討される企業の皆様方のご参考とすべく、「企業 における海外高度人材活用事例集」及び「海外高度人材活用のための企業向けガイドブック」を作 成いたしました。
海外高度人材の活用によるアジアビジネスの展開や九州経済の国際化に向け、本調査結果をご 利用いただけましたら幸甚です。
なお、本調査報告書等の取りまとめに当たりましては、企業、大学、自治体・留学生支援機関、既 卒就労者、留学生の皆様にご協力を頂き、アンケートやヒアリング調査を実施させて頂きました。ま た、各界有識者による「留学生等海外高度人材活用方策調査検討委員会」を設置し、貴重なご意 見を頂きました。ご協力頂きました関係各位に心より感謝申し上げます。
平成22年 3月 九州経済産業局
【本報告書の構成】
◇第1章:調査目的・背景と九州における海外高度人材を取り巻く環境
経済のグローバル化が進展する中で、企業がアジア等海外への事業展開を行うにあたり、イノベー ションを先導するようなグローバル人材となり得る海外高度人材を活用することは有効な方策の一つと なっている。現在、九州における留学生は 15,140 人で、全国の約 11%を占めているが、九州企業への 就職は全国の約 4%に止まっている状況。今回の調査では、企業、大学、自治体・留学生支援機関、
既卒就労者、留学生の 5 つの主体に対してアンケート調査等を実施し、海外高度人材の活用に関す る現状、課題、必要とされる方策等について検討する。
◇第2章:アンケート調査等による海外高度人材活用の現状
アンケート調査等を踏まえ、海外高度人材の活用に関する現状を分析。アンケート回答企業の内、
海外高度人材を活用している企業は約 25%。約 10%は今後の活用を考えているが、その他約 10%
は海外高度人材を雇用することへの”懸念”を感じて活用に踏み切れないでいる。これらの約 20%の 企業が活用に踏み切る環境を整えることが重要。
◇第3章:アンケート調査等による海外高度人材活用に関する課題
アンケート調査等を踏まえ、海外高度人材の活用に関する課題を分析。海外高度人材を活用して いない企業では、活用にともなう問題(日本語能力、日本のビジネス環境への適応性、専門分野と業 務内容の不一致等)の発生を”懸念”し、それが採用の”壁”となっているケースが多い。一方、海外高 度人材を活用している企業にこれらの諸問題の発生状況を確認したところ、経験等を積むことでそれ ほど問題視されていないことが判明。活用実績のない企業の”懸念”を取り除くことが重要。個別の課 題としては、就労ビザへの切り替え等法制度面での課題、九州企業と海外高度人材のミスマッチ等へ の対応が求められる。
◇第4章:海外高度人材の活用促進に関する提言等
海外高度人材活用に関する課題等を踏まえ、海外高度人材の活用促進のため以下の提言を行う。
行政・支援機関の取組としては、「海外高度人材の活用促進に向けた環境整備」「中小企業向けビジ ネスマナー・商習慣等に関する研修支援」「海外高度人材の活用促進のための啓発」等を提言。企業 や大学の取組に関する提言としては、「雇用のミスマッチを防ぐため就業体験の機会の拡充」や、大学 における「留学生と企業との接点となる留学生専用窓口の設置・拡充」等を提言。
目 次
第1章 調査目的・背景と九州における海外高度人材を取り巻く環境
... 11.1 調査目的・背景 ... 4
1.1.1 九州の人口構成及びグローバル化への対応 ... 5
1.1.2 九州経済における国際環境の変化と海外高度人材の活用 ... 7
1.1.3 九州が受け入れている留学生及びその進路 ... 9
1.1.4 海外高度人材の活用の“壁” ... 12
1.1.5 ビザの切り替え等法制度面の課題 ... 14
1.1.6 九州企業と海外高度人材のミスマッチ ... 14
1.2 統計データによる海外高度人材活用に関わる九州の特徴 ... 17
1.2.1 地域別海外進出状況 ... 17
1.2.2 海外高度人材の活用状況 ... 18
1.2.3 「技術」「人文知識・国際業務」分野のビザ登録者数 ... 20
1.2.4 留学生の状況 ... 22
1.3 アンケート及びヒアリング調査方法の概要 ... 26
第 2 章 アンケート調査等による海外高度人材活用の現状
... 292.1 企業の現状把握 ... 31
2.1.1 企業の海外高度人材活用実績 ... 31
2.1.2 企業の所在地・規模・業種 ... 31
2.1.3 企業の海外活動と海外高度人材 ... 37
2.2 大学等の現状把握 ... 41
2.2.1 大学の学部・大学院と留学生 ... 41
2.2.2 留学生の大学・大学院卒業後の進路 ... 43
2.2.3 大学による留学生の就職支援 ... 45
2.3 自治体・留学生支援機関(以下“支援機関等“)の現状把握 ... 46
2.3.1 支援機関等の留学生の就職に関わる活動状況 ... 46
2.3.2 留学生の就職活動手段に対する支援機関等の認識 ... 47
2.3.3 インターンシップに関する支援機関等の対応 ... 47
2.4 既卒就労者の現状把握 ... 48
2.4.1 海外高度人材既卒就労者の属性 ... 48
2.4.2 既卒就労者の就職 ... 50
2.5 留学生の現状把握 ... 52
2.5.1 留学生の専門分野等 ... 52
第 3 章 アンケート調査等による海外高度人材活用に関する課題
... 533.1 海外高度人材の就職活動に関わる動向と課題 ... 55
3.1.1 企業による採用活動の動向 ... 55
3.1.2 海外高度人材の学歴・専門分野別需要と在籍状況 ... 55
3.1.3 企業側の海外高度人材活用意欲と留学生が期待する就職先企業像 ... 61
3.1.4 海外高度人材の九州の企業への就職希望 ... 63
3.1.5 求人・求職活動手段 ... 67
3.2 海外高度人材の業務遂行上の課題 ... 72
3.2.1 業種別と採用・配属パターン別の業務分布(現状と将来の業務予測) ... 72
3.2.2 採用時点及び就業上の課題、企業の“実績”と未活用企業の“懸念” ... 75
3.2.3 日本語能力 ... 78
3.2.4 勤務年数 ... 80
3.2.5 企業機密・個人情報管理 ... 81
3.2.6 社内ローテーションに関わる課題 ... 82
3.2.7 海外事業展開のフェーズにあわせた海外高度人材の活用 ... 83
3.3 入国管理・就労ビザ ... 84
3.3.1 企業からみたビザに係る課題 ... 84
3.3.2 入国管理 ... 85
3.4 インターンシップ ... 86
3.5 求人側と求職側の就職活動における出会いのミスマッチ ... 87
3.6 就労者の業務遂行に関する支援 ... 88
3.6.1 企業による支援策と就労者による評価 ... 88
3.6.2 大学が実施すべきと考える支援策 ... 91
3.6.3 留学生が期待する企業による支援策 ... 92
3.7 就労者の生活環境に係る課題 ... 92
3.7.1 企業の見方と就労者の見方 ... 93
第 4 章 海外高度人材の活用促進に関する提言等
... 954.1 海外高度人材活用促進施策への期待 ... 98
4.1.1 企業が期待する支援策 ... 98
4.1.2 施策に対する大学及び支援機関等の見方 ... 98
4.1.3 既卒就労者が評価する支援策 ... 101
4.2 海外高度人材の活用促進のための提言等 ... 102
4.2.1 行政・支援機関の取り組みに関する提言 ... 102
4.2.2 企業の取り組みに関する提言 ... 105
4.2.3 大学の取り組みに関する提言 ... 107
4.2.4 法制度面の利便性拡大に係る企業からの要望 ... 108
第1章 調査目的・背景と九州における海外高度人材を取り巻く環境
第1章 調査目的・背景と九州における海外高度人材を取り巻く環境
(第 1 章の骨子)
1.本調査の目的・背景
◇我が国の経済は、世界経済の多極化、少子高齢化が進展する中、昨今の金融危機に端を発 した世界的な景気後退の影響を受け、雇用情勢、設備投資動向など厳しい状況が続いてい る。
◇一方、九州と地理的に近いアジア諸国は、日本企業等と共に産業集積を形成し、豊富で勤 勉な労働力を背景に力強く、急速な成長を遂げてきている。
◇中でも、近年、アジア諸国における中間所得者層の成長が著しいことや、環境問題、都市 化等、我が国が先に直面し、克服してきた制約要因や課題を抱えながら成長していること は、我が国の企業にとって大きなビジネス機会となっている。
◇このため、今後、九州経済の持続的な発展を図るためには、地域におけるイノベーション を創出するとともに、アジアの成長を取り込みつつ、アジア諸国と共に成長を図ることが 重要となっている。
◇一方、企業が海外事業展開を図るためには、アジアとの架け橋となり、イノベーションを 先導するようなグローバル人材となり得る海外高度人材の活用が有効な方策と考えられる。
◇このような中、我が国では「留学生 30 万人計画」として、海外からの留学生の受入倍増に 向けた体制づくりが進められており、今後、世界的な視点での人材育成・確保を行うため、
優秀な留学生を始めとした海外高度人材の受入環境の整備が必要とされている。
◇現在、九州には留学生が 15,140 人在籍(全国の約 11%)している。しかしながら、卒業後 は、関東、関西などの大都市圏で就職するケースが多く、九州企業への就職者数は 451 人 と、日本全体の留学生の就職者数 11,040 人の約 4%に止まっている状況であり、九州企業 での海外高度人材の活用は必ずしも進展している状況ではない。
◇以上のような状況を踏まえ、本調査事業では、九州企業において留学生を始めとした海外 高度人材の活用を促進するために、企業、大学、支援機関等の現状と課題を把握し、活用 促進のための方策について検討することを目的として調査を行った。
2.九州企業の海外展開と海外高度人材の活用状況
◇今回の主に海外事業を志向する企業向けアンケート調査によると、アンケート回答企業の うち約 25%が海外に現地法人や営業拠点を持ち、アンケート回答企業の約 42%が海外との 取引を行っている。
◇九州企業に雇用されている海外高度人材は、約 7,000 人で全国の約 3.5%。この内、“技術”
◇海外高度人材を活用していない企業では、活用に伴う問題の発生を“懸念”し、それが採 用行動の“壁”となって、採用に踏み切れないでいる。
◇一方、既に海外高度人材を活用している企業では、殆どの問題は対応が可能と考えており、
あまり問題視していない。
◇また、海外高度人材を活用している企業へのヒアリングでも、過去に起きた諸問題には、
相応に対応しノウハウが蓄積され、現在では殆ど問題になっていないとの事であった。
◇このような状況を踏まえ、海外高度人材の活用に踏み出せない企業の“懸念”を取り除く ことが、九州企業の海外高度人材活用促進の鍵となると考えられる。
3.九州の留学生の就職状況
◇全国の留学生の進路状況をみると、平成 20 年の留学生の大学卒業者のうち母国へ帰国した 比率は約 20%。日本の企業への就職者は 40%に近く、日本国内で大学院等に進学する比率 は約 25%程度となっている。
◇一方、九州の留学生の進路状況をみると、帰国した大学卒業者の比率が約 35%。九州の大 学院に進学した比率は 10%程度であり、日本で就職した比率は全国の比率と概ね同様とな っている。
◇しかし、日本に就職した九州の留学生のうち、九州の企業へ就職した留学生は約 10%に止 まり、多くの留学生が関東、関西などの大都市圏に就職している。
◇留学生が大都市圏の有名企業への就職を目指す傾向があることや、九州企業に関する留学 生の認知度が低いことが、この要因の一因と考えられる。
4.アンケート・ヒアリング調査による九州での活用状況調査の実施
◇企業(九州と大都市圏)、九州の大学、自治体・留学生支援機関、既卒海外高度人材就労者、
留学生の 5 つの主体を対象に、それぞれに適した設問を構成してアンケート調査を実施。
◇1 つの問題に対する異なる視点からの見方を、主体間の見方のギャップ等を立体的に把握 できるように設問を構成した。
◇アンケート・ヒアリング調査から、5 つの主体の現在の状況を把握し、その結果をグラフ 化して示した。
1.1 調査目的・背景
企業の国際競争やグローバル展開が加速し、世界規模でイノベ-ションを先導する人材等の獲 得競争が進展する中、我が国では「留学生 30 万人計画」が提唱され、海外からの留学生の受入れ 増加に向けた体制づくりが進められる等、世界的な視点での人材育成・確保に向けた環境整備が 必要とされている。
こうした中、九州地域は地理的にアジアに近いという優位性を活かしつつ、アジアビジネスの 展開などを通じてアジアの活力を取り込み、共に成長・発展していくことが期待されており、ア ジアとの架け橋となり得るグローバル人材の活用・育成が急務となっている。
平成 21 年の九州で学ぶ留学生は 15,140 人で全国の 11%を占める(※1)。しかしながら、卒業 後は大都市圏への流出が目立ち、平成 20 年の九州企業への就職者数は 451 人で、日本全体の留学 生の就職者数 11,040 人の 4.1%に止まっているのが現状である。(※1:(独)日本学生支援機構調 べ、※2:法務省入国管理局調べ)(1.2.4.4 参照)
一方、アジアを中心に海外展開・取引を行っている九州企業も増加している。海外との円滑な 業務・取引を行うためには、現地の言語を理解し、現地のマーケット情報、現地のネットワーク 等現地情報に長けた人材が必要である。また、中小企業が自社で海外に詳しい社員を抱えること も企業の将来に向けての有力な選択肢の一つであり、留学生の活用の有効性や失敗例を含めた事 例をよく理解することも必要である。
本調査では、第1章で、グロ-バル化という切り口から、アンケート等から得られる九州企業の グロ-バル化の状況や、ヒアリング等を通じて得られた九州の企業経営者からの生の声等を示し、
九州企業のグロ-バル化に向けた 1 つの方向性として、海外高度人材の活用を通じて九州企業のグ ロ-バル化を促し、結果として九州の企業の活性化を図るための方策を提示する。また、統計デー タに基づき、全国に対する九州の企業や就労者、留学生の位置付けを示す。
第 2 章では、本調査で実施したアンケートやヒアリングで得た基礎的な情報から、企業、大学、
自治体・留学生支援機関、既卒就労者及び留学生(以下これら全ての対象をまとめて示す場合は
“5 つの主体”と記す)の、海外高度人材の九州企業での活用に関係する基本的な取り組み状況 を示す。
第 3 章では、5 つの主体が経験している海外高度人材の活用に関わる課題と、それぞれが課題 克服のために実施している対応策、及び、就労者への支援策の実態を分析した結果を示す。この 分析もアンケートと企業を中心にしたヒアリングの結果を基礎としている。
最終章の第 4 章に、今後更なる海外高度人材の活用促進を図るために、アンケートやヒアリン グ調査等で分析した現状と課題を踏まえ、本調査の結論として、海外高度人材活用促進のための 提言を行う。
1.1.1 九州の人口構成及びグローバル化への対応
九州の平成 21 年における年齢別の人口構成は以下のとおり。この人口構成は、日本と九州に相 似形で表れている。既に戦後のベビーブームの年齢層は 60 歳を超え、今後は年を経る毎に若年層 が減少することが想定される。このことは、国内の需要が併行して減少するだけでなく、減少化 する労働力を奪い合う環境に突入することを示している。
平成 20 年秋の金融危機以降、世界的な景気後退の影響を受け、企業の活動が停滞し、現時点で は日本人の若年層の雇用が進まない状況に陥っているが、これは短期的問題とも考えられ、今後、
企業活動が活発化すれば、労働力の需要が逼迫することが予想される。
このように、近年の少子高齢化問題は日本の産業界において将来的に大きな課題であり、これ は九州の企業にとっても同様な課題となっている。
今後、少子高齢化の中での企業業績の回復に際しては、労働生産性の向上、高付加価値型への 構造転換や、定年延長による労働力確保等、多くの方策が複合的に講じられると考えられるが、
その中でも、経済のグローバル化に対応した海外高度人材の活用促進に向けた取組が重要となっ ていくものと考えられる。
出所:平成 17 年国勢調査を基に平成 21 年時点の構成に修正 (株)三菱化学テクノリサーチ(以下、MCTR)
平成21年時点の九州の年齢別人口分布
587,970 634,552
676,543 741,221
752,380 799,779
872,584 781,462 787,878
853,723 988,106
1,046,909 820,140 775,799 758,428 637,285
0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 4 ~ 8 歳
9 ~ 13 14 ~ 18 19 ~ 23 24 ~ 28 29 ~ 33 34 ~ 38 39 ~ 43 44 ~ 49 49 ~ 53 54 ~ 58 59 ~ 63 64 ~ 68 69 ~ 73 74 ~ 78 79 ~ 83
人口
単位: 人
九州企業の海外進出累計は、統計を取り始めた 1986 年以降 960 件となっている。(1.2.1 参照)
既にグローバル化に対応している九州企業は、国内の留学生を活用することのみならず、企業 が進出した現地の大学・大学院等新卒者及び既卒経験者等を活用しているケースもある。
A 社社長のメッセージ 一般機械製造業 (福岡県)
現在の日本の置かれた環境から、企業の国際化は避けられないと考え、特にここ 10 年は重 要課題として取り組んでいる。日本の中小企業の国際展開は重要であり、国際化するには現 地事情に通じた海外高度人材を活用することも大切である。
B 社社長のメッセージ IT ソフトウェア業 (福岡県)
中小企業で優秀な人材を採用しようとすると、海外高度人材に目が向く。日本人の優秀な 卒業生や中途採用者は大企業に就職するケースが多い。知名度が低い中小企業が優秀な人材 を採ろうとすると、自ずと海外高度人材を選ぶ機会が増えるのが現状である。
C 社社長のメッセージ 環境コンサルティング業 (福岡県)
海外展開に関しては、以前から重要課題として取り組み、実施している。将来への備えと しての海外高度人材の活用の目的は、自社の海外拠点との業務の円滑化、拡大への備え、海 外との取引ビジネスの円滑化、将来の海外展開の幹部候補生の育成等である。また、企業と 日本人社員の活性化につながるメリットもある。
1.1.2 九州経済における国際環境の変化と海外高度人材の活用
本調査で実施した主に海外事業展開を志向する企業向けのアンケート調査では、回答した企業 の 25%が自ら国際拠点を有し、直接的に海外活動を行っている。また、原料や中間製品を輸入し、
製品を海外に輸出する等、海外との直接取引をしている企業は 4 割を超える。
このような国際環境の中で事業展開を行えば、原料調達、製品開発、販売等において、自ずと 海外との交渉等が必要になる。このとき、これまでは、英語圏の欧米先進国との交渉等が中心と なっていた。しかし、現在は、製品輸出等の相手国が必ずしも英語圏ではないアジア諸国や中南 米、インド、中東等新興国であるケースが増え、英語に長けた日本人スタッフで対応できない環 境が生まれつつある。このとき、日本の現地商社を活用する手段や自社の日本人スタッフが各国 の言語を修得する方法もあるものの、現地出身の海外高度人材の活用が有効な方策の一つとなる ことが考えられる。
1.1.2.1 九州経済の「アジア度」
九州の経済活動の「アジア度」として、海外進出、輸出入、姉妹都市数、国際路線数等の尺度 を設定して、経済活動に占めるアジアの割合を算定した。
この「アジア度」では、輸入額(※)以外の項目において、九州におけるアジア度は日本全体 の経済活動のアジア度より高く、九州とアジアの経済交流が進展していることが示されている。
(※)九州の「輸入額」のアジア度が低いのは、九州には大規模な原油備蓄基地が存在するため、輸入額に占め る石油の割合が高いことによる。
九州のアジア度 (全国との比較)
注:分数は 2008 年の九州の対アジア数値/対世界を示し、( )内の数値は 2007 年のアジア度を示す。
出所:財務省「貿易統計」、(財)九州経済調査協会「九州・山口地場企業の海外進出 1986~2008」、
(株)東洋経済新報社「海外進出企業総覧【国別偏】」、法務省「出入国管理統計年報」、(株)交通新聞社
「JR 時刻表」、(財)自治体国際化協会資料を基に九州経済産業局作成
35.5 81.7
92.6 94.9
60.2
51.5
40.6 32.561.2 74.0
49.3 60.3 海外進出 企業件数
輸入額
姉妹都市 締結数
国際 航空路線数 外国人
入国者数 輸出額
九州(2008年)
全国(2008年)
784 960件
26,448 74,557億円
87 169件
25 27路線 825,445
869,835人 39,126 64,953億円
(80.3)
(40.5)
(50.3)
(96.0) (94.1)
(60.0)
貿易統計データから、九州の輸出入の推移は、2004 年以降に大きな伸びを示しており、日本全 体の輸出入に占める九州の比率も高まってきている。更に、九州と中国及び韓国のそれぞれの貿 易額の推移を見ると、特に九州と中国の貿易の増加が顕著である。一方で、中国と韓国間の貿易 も大きく増加しており、アジア大として捉える中で、更に中国、韓国の重要性が高まる方向にあ ると考えられる。
九州の輸出入額と全国比の推移
出所:財務省貿易統計を基に九州経済産業局作成
九州・中国・韓国間の貿易額の推移
出所:World Trade Atlas、財務省貿易統計を基に九州経済産業局作成
0 1 2 3 4 5 6 7 8
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
輸出額(兆円) 1.5 1.7 1.8 2.0 2.1 2.0 2.3 2.5 3.3 3.7 3.7 3.0 3.4 3.1 3.6 3.8 4.5 4.8 5.6 6.5 6.5 輸入額(兆円) 1.6 1.9 2.3 2.3 2.1 2.0 2.1 2.2 3.0 3.3 2.8 2.4 2.8 3.0 3.0 3.1 3.6 4.5 5.7 6.4 7.5 輸出全国比(%) 4.3 4.5 4.4 4.7 4.8 5.1 5.6 6.1 7.3 7.3 7.4 6.3 6.5 6.4 6.9 7.0 7.4 7.3 7.4 7.7 8.0 輸入全国比(%) 6.8 6.6 6.8 7.2 7.2 7.3 7.3 7.1 7.8 8.1 7.7 6.9 6.9 7.0 7.1 7.0 7.4 8.0 8.5 8.8 9.4 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08年
輸出入額(兆円) 全国比(%)
0 50 100 150 200 250
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000
九州と中国 九州と韓国 中国と韓国
九州と中国 45 47 55 55 60 77 103 120 150 192 233 九州と韓国 49 65 90 78 77 87 106 111 124 139 149 中国と韓国 182 221 308 310 403 570 793 970 1,140 1,381 1,653
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08年
貿易額(億ドル) 中国と韓国の貿易額
(億ドル)
1.1.2.2 アンケート調査にみる九州企業の海外進出・海外取引
今回、本調査で実施した主に海外事業を志向する企業向けのアンケートによれば、アンケート 回答企業のうち 4 割を超える企業が海外とのつながりを持っているが、海外高度人材を活用して いる企業は、アンケート回答企業では未だ 25%に止まっている。(2.1.1 参照)。
九州の企業による海外高度人材の活用状 況を示すデータとして、平成 20 年の入国管 理局による全国の都道府県別に海外高度人 材への就労ビザの発給状況を示したデータ を見ると、主に文科系の人材に与えられる
“人文知識・国際業務”ビザの発給は、全 国で 6 万 7,000 人強に対し九州では 2,400 人弱で 3.5%。主に理工系の人材が取得する
“技術”ビザは全国で 5 万 2,000 人に対し 九州では 816 人で 1.6%に過ぎない。
他の都府県を見ると、人文知識・国際業 務ビザは東京都が全国の 4 割を超え、神奈 川県、千葉県はそれぞれ 8%、7%内外の比率 である。技術ビザはやはり東京都が 4 割弱 で、神奈川県、千葉県で 16%と 11%に達する。
九州の比率は、全国他の主要都府県と比べ ても少ない状況である。(1.2.2.2 参照)
1.1.3 九州が受け入れている留学生及びその進路
日本における留学生数の推移をみると、アジアを中心とした地域からの留学生数は年々増加し、
平成 21 年には約 13 万 3,000 人の留学生が日本で学んでいる。そのうち九州の大学に学ぶ留学生 は 1 万 5,140 名で、日本全体に占める割合は 11.4%に達している。
企業:Q1 海外拠点の有無
営業所、情報セン ター等の 拠点あり
8%
現地法人 有り 17%
なし
75% 回答数比率%
重複回答 N:458
企業:Q2 事業所の海外との取引等の有無 回答なし
2%
あり なし 42%
56%
回答数比率%
N:449
在留資格別外国人登録者数(専門的・技術的13分野から 人分知識・国際業務、技術の2分野を抜粋)
専門的・技術的13分野から抜粋 全 国(人) 67,291 52,273 九 州(人) 2,358 816 九州/全国(%) 3.5% 1.6%
九州内訳 実数(人) 構成比(%) 実数(人) 構成比(%) 福岡県 1,498 63.5% 583 71.4%
佐賀県 71 3.0% 26 3.2%
長崎県 190 8.1% 76 9.3%
熊本県 177 7.5% 52 6.4%
大分県 205 8.7% 49 6.0%
宮崎県 112 4.7% 16 2.0%
鹿児島県 105 4.5% 14 1.7%
上位 8県 (専門的・技術的13分野)
東京都 27,953 41.5% 19,452 37.2%
神奈川県 5,643 8.4% 8,591 16.4%
千葉県 4,662 6.9% 5,483 10.5%
愛知県 3,736 5.6% 3,217 6.2%
埼玉県 4,458 6.6% 4,689 9.0%
大阪府 5,575 8.3% 2,255 4.3%
兵庫県 1,820 2.7% 1,139 2.2%
福岡県 1,498 2.2% 583 1.1%
出所:法務省入国管理局統計を基にMCTR作成
人文知識・国際業務 技術
出所:(独)日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査結果」および 2009 年法務省入国管理局データ
従来、留学の目的としては、留学で得た知識や技術を、帰国後、教育活動や母国の企業への就 職を通じて母国に還元するという意義が大きかったが、最近は必ずしも母国に帰らず、日本に残 って日本企業に就職することで国際化に関与したいという流れが強くなってきている。しかし、
現在、留学生にとって日本での就職はそれほど容易ではなく、九州企業での就職はさらに厳しい 状況である。
次に、毎年卒業する留学生が、日本全体と九州の企業に就職する数の推移を示す。前述したよ うに、九州の大学・大学院に在籍する留学生は全国の 11%強に達しているが、平成 20 年の九州の 企業に就職する割合は全国に対して 4.1%に過ぎない。九州企業に就職している数は確実に増えて はいるものの、全国に対する比率は平成 17 年の 4.8%をピークに減少している。(1.2.3 参照)
九州への就職の相対的減少を分析するために、留学生の卒業後の進路について、日本全体と九 州の卒業生を対比した。
日本全体では、留学生の大学卒業者は約 1 万 2,000 人であり、そのうち母国へ帰国した数は 2,300 人強で約 20%である。日本の企業への就職数は約 4,500 人で日本全体の留学生の大卒の 40%
近い。日本国内で大学院等に進学する数は約 3,000 人で約 25%となっている。
九州と全国の留学生数と比率推移
64.0 78.8
95.6 109.5
117.3121.8117.9 118.5123.8 132.7
4.3 5.3 8.9 10.4 11.1 11.5 11.8 12.5 13.7 15.1 6.7% 6.7%
9.3% 9.5% 9.4% 9.5% 10.0%10.6%11.1% 11.4%
0 20 40 60 80 100 120 140
2000 2003 2006 2009
年 留学生数
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
12.0%
14.0%
16.0%
九州 全国
全国 九州 九州/全国
1,000人
比
全国及び九州地域への外国人留学生の就職数と比率の推移
2003 2004 2005 2006 2007 2008 全国 人 3,778 5,264 5,878 8,272 10,262 11,040
九州 人 106 204 281 394 428 451
九州/全国比率 % 2.81 3.88 4.78 4.76 4.17 4.09
出所: 法務省入国管理局 「平成20年における留学生等の日本企業への就職状況について」
年
人数合計(人) 12,059 6,855 2,567 1,115
帰国率 (%) 19 25 41 18
日本国内就職率(%) 37 33 29 20
(参考) 外国人留学生卒業後の進路状況(平成19年度・全国)
3,023
2,261
285 43 844
不明 604
85 8 98 62
その他の国へ
716 309 66
日本国内・その他 1,258
日本国内・進学 1,479
77 569 日本国内・就職 4,503 224
747 350 116 出身国帰国・その他 1,674 857
7
17 34
出身国帰国・進学 出身国帰国・就職 87
642 842 707
短大・高専 博士課程修了
修士課程修了 大学卒業
単位:人
出所:(独)日本学生支援機構 データを基にMCTR作成 対象:日本全体の留学生
人 人 人 人 人 人
縦人数合計 895 106 958 239 1086 136
% % % % % %
帰国率: ((1.+2.)/計) 35 12 36 46 36 53 日本内・九州外就職率: (4./計) 26 28 29 18 26 15
九州就職率: ((7.+8.)/計) 10 14 9 8 7 8
九州就職+自大学進学: ((6.+7.+8.)/計) 19 29 19 22 11 19
大学: Q1 大学の既卒留学生の卒業後の動向
103
27
274 284
300 333 381
23 76 26 81 10
89 73
86 11 17 4
2 4 1 1 7
34 15
82 16 91 49
30 6 9 7
33
232 30 44 21
52
47 175 1
9 105 65
10 4 15 5 13 7
文系 理工系 文系 理工系 文系 理工系
1. 本国の国費留学生で本国に帰った 2. 私費留学だが本国に帰った 3. 日本以外の海外に行った
4. 九州外の企業や公的機関に就職した 5. 九州外の大学に進学した
6. 本校で進学(学部→修士→博士→(ポスドク)→研究室) 7. 九州の公的機関等に就職した
8. 九州の企業に就職した 9. その他
2007年卒業 2008年卒業 2009年卒業
回答した大学の記載実数合計 大学数N52, うち数大学の人数記載なし
単位:人
九州の留学生が日本で就職した比率は 30~40%で、概ね日本全体の比率と変わらない。しかし、
重要なことは、日本に就職した 30~40%の九州の学生のうち、九州の企業へ就職した留学生は 4 分の1から 3 分の1、全留学生卒業生の約 10%に止まり、多くの学生が大都市圏に流出してしま うことである。
1.1.4 海外高度人材の活用の“壁”
1.1.4.1 海外高度人材の活用経験がない企業の採用の“壁”
アンケートでは、海外高度人材を活用していない企業に理由を質問したところ、海外高度人材 活用に伴う問題の発生を“懸念”し、それが採用行動の“壁”となって、採用に踏みきれないで いる様が窺えた。一方、既に海外高度人材を活用している企業にこれらの諸問題の発生状況を質 問したところ、ほとんどの問題は対応が可能でさほど問題視されていない事が判明した。
過去に諸問題は無かったわけではないが、対応しノウハウが蓄積され、現在ではほとんど問題 にならないところに来ているとの事であった。従って、“懸念”によって踏み出せない企業の“懸 念”自体を取り除くことが、九州企業の海外高度人材の活用促進の一助となる重要な点である。
(3.2.2 参照)
1.1.4.2 海外高度人材の九州企業への就職の“壁”
企業側の“壁”だけではなく、海外高度人材側にも、企業への就職に関する“壁”がある。
(1)九州の留学生の就職先
九州の留学生に、九州企業への就職についてアンケート調査を行ったところ、九州の中小企業 への就職希望も多いことが明らかとなった。
留学生: Q1 卒業後、日本へ就職する気持ちがあるか
九州を希望 39
九州以外の 大都市圏を
希望 42
日本国内の場所は 限定しない
73 母国での
就職が 決まっている
7 日本以外に行く
3 大学・大学院へ
進学し、
研究を続ける 15
165 25人
25
日本 に就 職す る 気 持ち がある 日本に就職 す る
気持ち はな い
決 め て いな い
海外なら どこでも 良い
11
回答人数表示(人)
単数回答 全回答数 N=215人
単位: 人
留学生: Q2-2 希望する企業規模
規模にはこ だわらない
23%
全国レベル での有名大
企業 22%
大企業 33%
中小企業 18%
決めていな い、考えてい
ない 4%
回答数比率(%) 複数回答 N=284
単位: %
留学生が企業名を知っている大企業への就職を目指す傾向があること、併せて九州企業に関す る留学生の認知度が低いことが、ある範囲で九州企業のハンデキャップになっていることは否定 できない。しかし一方で、九州の企業に就職したいと考える留学生は多く、実際九州で働いてい る海外高度人材の多くが、九州での就労状況に満足している。
既に海外高度人材を活用している多くの企業が、採用の継続に当たっては、自社の PR に加えて、
自社の海外展開と九州における就労環境、生活環境の良さを PR している例も多いし、既卒就労者 も留学生もそれらを求めている。さらに、求人側企業にとっても、求職側留学生にとっても、最 大のポイントは、企業の所在地に関係なく“興味のある業務で働きたい”ということである。こ れは、採用段階で企業側と留学生の間で、互いの要求ギャップが起きないよう、交互に充分に思 いのすり合わせをすることができれば、九州での就職が促進されることを意味する。
留学生への本アンケート回答で見る限り、九州以外の大都市に行きたいと明確に答えた留学生 は全体の 2 割弱に止まる。九州を明確に希望する留学生も 2 割弱おり、ほぼ同レベルにある。「限 定しない、決めていない」という回答者は、九州でも良いという肯定的回答であると見られる。
希望する企業規模に関する回答では、大企業や全国レベルでの有名企業への就職を 55%以上の 留学生が希望している。九州には希望する企業が少なく、結果として九州を出て行くことになる 可能性は高いと見ている留学生が半数以上いることが、回答の要因となっている。一方で、積極 的に中小企業に就職したいと回答した留学生が 2 割弱おり、規模に拘らないとする回答も 2 割強 あって、合計で 4 割以上になる。
これらの、「九州の中小企業に就職したい」、または「しても良い」と回答している留学生の期 待に応える行動が、企業側や行政・留学生支援機関等に求められる。(3.1.4.1 参照)
(2)海外高度人材にとっての日本語の壁
5 つの主体へのアンケートや企業へのヒアリングを通じて、海外高度人材が九州の企業に就職 する上で、日本語能力が大きな鍵となることが浮き彫りとなっている。
企業のアジアを中心とする海外展開に必要な海外高度人材の語学能力は、企業の海外展開のあ り方で異なる。複数の先進国や新興国との広い海外展開であれば、英語が中心となる。アジアで もシンガポール、ベトナム、香港、フィリピン等がこの範疇に入る。一方、英語圏でない特定の 国を想定した海外展開であれば、英語よりその国の言葉に焦点が当たる。現在の中心は中国であ り、韓国等もこの範疇に入るであろう。海外高度人材に求める語学能力は、先ずこの事業展開の 相手国や地域を意識して把握されねばならない。
本アンケートでは、日本語と英語、日本語と専門能力を対比させた設問を企業のみならず、既 卒就労者や留学生、そして大学、行政・支援機関のそれぞれに聞いているが、どれを見ても日本 語優先という回答が出ている。企業へのヒアリングでも、日常会話ではなくビジネス日本語の必 要性が繰り返し言われている。勿論、企業は多様であるので、それほど強く日本語を要求しない 企業もあるが、総じて日本語が仕事のベースであり、この能力が低いと業務が構築できないとす る企業がほとんどである。日本語の重要性については、かえって既卒就労者のほうが強く感じて いる様子も窺える。(3.2.3 参照)
1.1.5 ビザの切り替え等法制度面の課題
九州企業への就職の壁としてビザ問題が言われることも多い。営業等文系出身者への人文知 識・国際業務ビザであれ、技術開発等技術系出身者の多くが取得する技術ビザであれ、原則的に は海外事業に関する業務に就く必要がある。しかし九州の企業は、海外展開をしていてもその事 業規模が小さく、海外高度人材を雇用するほどの規模でなかったり、雇用しても必ずしも充分な 海外関連業務量がない等の理由で企業自体が海外高度人材の活用に消極的になる場合や、入国管 理局の審査で不十分として許可が下りないという事例が多く報告されている。
既に海外高度人材を活用している多くの企業や既卒就労者の回答では、現時点としては、ビザ 問題をさほど大きな問題としては捉えていない。しかし企業へのヒアリングでは、多くの企業が 過去にビザ問題で苦労した経験があるが、その問題を乗り越えてくる過程で多くのノウハウを身 につけ、現在では殆ど問題とならないという状況に達したことが披露されている。それでも、現 在のビザ取得・更新に必要な企業としての作業負担は大きく、企業の実績に基づいた手続きの緩 和ないし簡素化を望む声は多い。
調査では入国管理局から、最近の状況を聞く機会を得たが、今後個々のビザ問題には、入国管 理局の相談センターから早い段階でアドバイスを受けることの重要性が強調された。(3.3 参照)
1.1.6 九州企業と海外高度人材のミスマッチ
ここまで、企業や海外高度人材が直面している九州での就職の“壁”について記述したが、更 に、調査を通じて“最大の壁”として認識されたのが、企業と就労者の求人・求職段階でのマッ チングの不足問題である。
マッチングの不足には大きく分けて 2 つの側面がある。1 つは、そもそも九州の中で、求人側 企業の要望と求職者側海外高度人材(中途採用候補の既卒就労者、新卒採用の留学生)の希望の 就労者: Q12 勤務先から母国語以外の
語学分野・能力をどう求められているか
回答なし
1% 業務遂行に必
要な英語能力を 優先
4%
業務遂行に必 要な日本語能 力を優先
59%
業務遂行に必 要な英語と日本 語の両方を求め
られる 21%
(業務の必要上 から)その他の 語学能力を求め
られる 6%
語学能力は、
それほど求め られない
9%
回答数比率%
N=68
企業: Q16 九州の事業所等で海外高度 人材を採用する場合の語学能力
業務遂行に必 要な日本語能 力を優先する
39%
業務遂行に必 要な英語能力 を優先する
6%
業務遂行に必 要な英語と日 本語の両方を
求める 33%
回答なし
(業務の必要 15%
上から)その 他の語学能力
を求める。
5%
語学能力は そこそこで
よい。
2%
回答数比率%
N:144
1.1.6.1 九州企業と海外高度人材の希望条件のミスマッチ
本調査のアンケートとヒアリングによれば、九州の企業は比較的に理工系の海外高度人材を求 めるケースが多く、主に理工系を要求する企業が 61%、文系を求める企業が 31%となっている
(3.1.2 参照)。
一方、アンケートの結果では九州の大学・大学院に在籍する理工系の留学生在籍比率は文系に 比べて相対的に少なく、九州の大学の Web サイトからの参考集計でも理工系留学生比率は少ない と示されている。(2.2.1 参照)
企業: Q14 九州の事業所等で新卒の留学生を 採用する場合の必要な専門分野
バイオ、
医療系
6% その他
9%
電気・電子・
情報工学系 16%
化学・化石エ ネルギー系
4%
環境・新エネ ルギー系
11%
機械工学系 15%
理学系 9%
法科などの 文系 11%
経済などの 文系 20%
回答数比率%
N:246
参考: 九州の国立総合大学と他の主要大学の留学生数
61 86
医学・薬学 60
その他理工系 182 652 188
工学系
385 351 219
11 20
理学科 13
文系科 3,671 715 100
博士課程 学部 修士課程
単位:人
表記は留学生数実数 Webからの集計(計6,714人)
九州の国立総合大学:7校 同、主要公立・私立大学:5校
更に、企業が求人に際して理工系を求める場合に、専門性を強く求める場合と、ある程度の理 工系思考を身につけていれば良いというケースがあるが、前者であれば、もともと対象となる留 学生は九州では少ない状況でもある。
1.1.6.2 九州企業と海外高度人材の物理的出会いのミスマッチ
現在の九州での就職問題には大きな壁があることを示す。その壁とは、求人希望を持つ企業情 報と求職を希望する海外高度人材を結びつける具体的なシステムや物理的な場が少ないというこ とである。
出会い機会の不足というミスマッチの現状、その原因等は多くの複合的な要素からなり、個々 の要素については 3.5 項で分析した。
国立大学 A(就職担当課)
就職支援は留学生も日本人学生も同じように情報提供しており、留学生に対して、特別 な支援や措置は実施していない。
九州での就職例は、1 割程度に止まっている。
国立大学 B(国際業務担当部門)
留学生の受け入れは国際部門でおこなうが、受け入れから就職に至る過程は、留学生が 所属する教室・教授が責任をもって対応している。
昨今の流れに鑑み、大学として対応窓口の集約化を考えている。
九州での就職例は限られている。
私立大学 C(国際業務担当部門)
留学生の受け入れから就職まで、一貫して担当部門が扱っている。
大都市圏への流出が多い。
1.2 統計データによる海外高度人材活用に関わる九州の特徴
九州企業や九州で就労する既卒就労者・留学生が、日本全体や大都市圏との対比において如何 なる位置にいるかについて検討する。
1.2.1 地域別海外進出状況
九州企業の海外進出累計は、統計を取りは始めた 1986 年以降 960 件となっている。九州企業の 海外進出先はアジア 81.7%、北米 9.7%。アジアの内訳は、中国 46.9%、ASEAN18.4%となっている。
すなわち海外に進出する九州企業の約 8 割がアジアを選んでおり、全国を 21.4 ポイント上回って いる。中でも、中国へ進出している企業の構成比は、全国と比較して 23.3 ポイント上回っている。
進出年次別にみると、アジアへの進出熱が高まった 1994 年から 1996 年までのピーク時には 60 件前後の高水準を維持した。また、2002 年以降 6 年間は、年間 50 件以上の進出数で推移したが、
世界的な景気後退等の影響を受け、2008 年の新規海外進出件数は 18 件と前年の 56 件から激減し た。一方で、2008 年の進出 18 件の内 17 件がアジアを進出先としており、九州全体のアジアへの 進出比率を押し上げた。
九州企業の国地域別海外進出状況
進出年
構成比(%) 構成比(%) 構成比(%) 構成比(%) 不明 構成比(%) 構成比(%) 構成比(%) 掲載ベース 構成比(%)
アジア(旧ソ連地域は除 69 71.1 185 80.4 152 79.6 227 84.1 40 49 89.1 45 80.4 17 94.4 784 81.7 15,275 60.3 中国(香港は除く) 20 20.6 107 46.5 76 39.8 157 58.1 28 25 45.5 28 50.0 9 50.0 450 46.9 5,981 23.6 香港 5 5.2 12 5.2 11 5.8 6 2.2 - 4 7.3 4 7.1 - - 42 4.4 1,265 5.0 台湾 11 11.3 8 3.5 12 6.3 17 6.3 2 4 7.3 2 3.6 - - 56 5.8 1,078 4.3 韓国 7 7.2 9 3.9 6 3.1 12 4.4 5 3 2.0 2 3.6 - - 44 4.6 815 3.2 ASEAN 25 25.8 46 20.0 45 23.6 32 11.9 5 11 20.0 8 14.3 5 27.8 177 18.4 5,616 22.2 その他アジア 1 1.0 3 1.3 2 1.0 3 1.1 - 2 3.6 1 1.8 3 16.7 15 1.6 511 2.0
<ASEAN4> 20 20.6 29 12.6 38 19.9 23 8.5 4 7 12.7 4 7.1 3 16.7 128 13.3 3,825 15.1
<NIEs> 26 26.8 40 17.4 34 17.8 40 14.8 8 12 21.8 9 16.1 - - 169 17.6 4,322 17.1 北米 16 16.5 26 11.3 22 11.5 23 8.5 1 1 1.8 4 7.1 - - 93 9.7 3,851 15.2 EU 6 6.2 17 7.4 10 5.2 11 4.1 2 1 1.8 4 7.1 1 5.6 52 5.4 3,664 14.5 中南米 1 1.0 - - 5 2.6 3 1.1 0 3 5.5 2 3.6 - - 14 1.5 975 3.9 大洋州 5 5.2 2 0.9 - - 2 0.7 0 1 1.8 - - - - 10 1.0 609 2.4 中東 - - - - 1 0.5 2 0.7 - - - 3 0.3 330 1.3 その他 - - - - 1 0.5 2 0.7 - - - 1 1.8 - - 4 0.4 607 2.4
97
100.0 230 100.0 191 100.0 270 100.0 43 55 100.0 56 100.0 18 100.0 960 100.0 25,311 100.0 2008年時点
世 界 合 計
九 州 全 国
86~90年 91~95年 96~00年 01~05年 06年 07年 08年 86~08年(累計)
出所:(財)九州経済調査協会「九州・山口地場企業の海外進出 1986~2008」、東洋経済新報社「海外進出企業総覧 2009」を基に 九州経済産業局作成
九州企業による海外進出の年次別進出件数
出所:(財)九州経済調査協会「九州・山口地場企業の海外進出 1986~2008」を基に九州経済産業局作成
1.2.2 海外高度人材の活用状況
1.2.2.1 国籍別外国人登録者数国籍別の外国人登録者数を示す。なお、外国人登録者には高度人材以外の外国人労働者等も含 んでいる。九州は地理的に中国に近いことを反映して中国人の比率が全国より約 13%高い。
出所: 法務省入国管理局「都道府県別国籍別外国人登録者数」
1.2.2.2 「技術」「人文知識・国際業務」分野の外国人登録者数
ビザの種類の内、専門的・技術的 13 分野と「技術」及び「人文知識・国際業務」分野について、
九州各県と全国の上位都府県を表に示す。この表の一部を 1.1.2.2 に示した。
7,482
中国 655,377
韓国・朝鮮 589,239
ブラジル 312,582
フィリピン 210,617
その他 203,875
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
全1 国
ベトナム 41,136 インドネシア 27,250 インド 22,335 ペルー 59,723 米国 52,683 タイ 42,609 単位:人
中国 40,202
韓国・朝鮮 26,889
フィリピン 9,375
その他 7,482
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
九1 州
英国 802 ネパール 756 ブラジル 639 米国 2,789 インドネシア 2,121 ベトナム 1,500 タイ 929 単位:人
在留資格別外国人登録者数(専門的・技術的13分野)
「技術」及び「人文知識・国際業務」
全 国(人) 2,217,426 198,504 119,564 67,291 52,273
九 州(人) 93,484 6,997 3,174 2,358 816
九州/全国(%) 4.2% 3.5% 2.7% 3.5% 1.6%
九州内訳 順位 実数(人) 構成比(%) 順位 実数(人) 構成比(%) 順位 実数(人) 構成比(%) 実数(人) 構成比(%) 実数(人) 構成比(%) 福岡県 13 50,963 54.5% 8 3,909 55.9% 8 2,081 65.6% 1,498 63.5% 583 71.4%
佐賀県 45 4,315 4.6% 45 260 3.7% 43 97 3.1% 71 3.0% 26 3.2%
長崎県 35 8,030 8.6% 30 714 10.2% 31 266 8.4% 190 8.1% 76 9.3%
熊本県 32 9,267 9.9% 28 742 10.6% 33 229 7.2% 177 7.5% 52 6.4%
大分県 30 11,034 11.8% 32 542 7.7% 32 254 8.0% 205 8.7% 49 6.0%
宮崎県 46 4,162 4.5% 37 391 5.6% 36 128 4.0% 112 4.7% 16 2.0%
鹿児島県 39 5,713 6.1% 34 439 6.3% 37 119 3.7% 105 4.5% 14 1.7%
上位 8県 (専門的・技術的13分野)
東京都 1 402,432 18.1% 1 75,541 38.1% 1 47,405 39.6% 27,953 41.5% 19,452 37.2%
神奈川県 4 171,889 7.8% 2 21,311 10.7% 2 14,234 11.9% 5,643 8.4% 8,591 16.4%
千葉県 6 111,228 5.0% 3 14,413 7.3% 3 10,145 8.5% 4,662 6.9% 5,483 10.5%
愛知県 2 228,432 10.3% 4 12,761 6.4% 6 6,953 5.8% 3,736 5.6% 3,217 6.2%
外国人登録者数(総数)
専門的・技術的13分野
技術 人文知識・国際業務
外国人労働者も含む外国人登録者の数では福岡県が全国で 13 位であるが、専門的・技術的 13 分野と「技術」及び「人文知識・国際業務」分野では福岡県が全国で 8 位を占めている。
専門的・技術的 13 分野と「技術」及び「人文知識・国際業務」分野につき九州の日本での位置 を見やすくするために九州各県、全国の上位都府県を図で示すと以下のとおりである。
参考: 主要都府県と九州の在留資格別外国人登録者数 (専門的・技術的13分野) 2008年
12 8 6
12 9
13
14 10
3 2 1
九州合計 7
1 1 4 2
福岡県
2 1 6 3
兵庫県 大阪府 2
4 5
埼玉県
7 4 3
愛知県
5 5
千葉県
6 9 21 14
神奈川県
19 28
76 47 東京都
専門的・技術的
13分野 「技術」及び
「人文知識・国際業務」
人文知識・
国際業務
技術 出所:入国管理局統計
を基にMCTR作成
単位:1,000人
参考: 九州の海外高度人材就労者に対するビザ発給件数
(2008年度時点の累積数)
1 1 0.1
4 鹿児島県
1 1
4 0.2
宮崎県
2 0.5 3
大分県 5
1 2
7 2 熊本県
2 1 7 3
長崎県
3 1 1 0.3
佐賀県
15 6 39 21
福岡県
24 8 70 32
(九州合計)
専門的・技術的
13分野 「技術」及び「人文知 識・国際業務」
人文知識
・国際業務 技術
出所:入国管理局統計を基に MCTR作成
単位:100人